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あばたもえくぼ(シオライ+ルシル) [ 82/196 ]

777hit 三色団子様へ






「かわいいなあ」



 シオンはもう何度目かわからないため息をもらした。

「君、そういうのをあばたもえくぼというのを知っているかい?」

 声はすれども姿は見えない。その声の正体はエリス家当主、ルシル・エリスである。


「何を言っている、ルシル。こんな可愛い生物、他にはいないぞ」


 そう言ってソファーに寝ころんでいるライナを見る。



 すやすやと、犬か猫のように四肢を丸めて眠っているライナ。シオンにしてみればその全てが愛おしい。



「そうかい」




 ☆☆☆



「ん〜……あれ、シオンは?」


 ライナは目覚めると見覚えのないソファーの上にいた。おそらく王室のソファーだろう。毛布が掛けられている。

 シオンの姿がない。


「彼なら執務室だよ」


 声の方を見る。が、姿はない。


「ルシルか」


 そう言うと彼はするりと姿を現した。 


「シオンについていなくていいのか?」


 欠伸をしながらそう言うと、ルシルは淡々と答える。

「別に、必要ないだろ」




 シオンは去り際にルシルに一つ言った。


「ライナについていてくれないか。起きたとき俺がいなかったら寂しいだろ?」


 
 が、起きたライナを見てもそんな様子はない。どちらかというといなくてほっとしているように見える。


 ライナはルシルのそばまで来て、

「毛布、サンキュ」

 そう言って毛布を手渡した。

「それはシオンがやったのとは思わないのかい?」

「や、シオンは絶対やんねえし。どっちかってと剥ぐだろ。人でなしだし。変態だし」


 ルシルは何も言わずに毛布を受け取った。


「どうせ、今いるのもアイツの命令なんだろ? だったらもういい。アイツのとこ行けよ」

「いや、これは命令だけじゃないよ」

「?」

「これは、王の命令だからだけじゃないよ」




 規則的な寝息。その幸せそうな寝顔。

 見ているだけで、安心する。あたたかい人。



 本当は可愛いと言うことには充分頷けた。

 本当は自分もそう思っていたのだから。





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