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居眠り教室の野望(シオライ・学パロ) [ 83/196 ]
666hit れん様へ
夜。美しい闇に包まれた空。瞬く星。水を打ったようにしんと静まった教室。
黒板の前にいるのはシオン・アスタール。教師である。また、このクラスの担任でもある。
「……ライナ」
窓際の一番後ろ(誰だ、こいつにこんな席を与えたのは)でぐうぐうと寝息を立てている少年に、カツカツと歩み寄る。
「おい、もうとっくに下校時間過ぎてるぞ」
揺さぶってみれど、反応はない。
「……起きないと……」
その先を言おうとして、やめた。
そっとライナの髪をかき上げる。閉じられた瞳にはいつも、何を映しているのだろう。
気がつけば、口づけていた。
「キス、するぞ」
もうしちゃったけどな、と舌を出す。
「……変態教師」
「なんだ、起きてたのか」
のそりとライナが起きあがる。いつもののたのたとした調子ではなく、テキパキと荷物を鞄に詰める。
「ライナ、一緒に帰らないか?」
「嫌です。帰って寝なきゃいけないんで」
「今も寝てたろうが。それに、待っててくれたんだろ?」
「んなわけあるか! 死ね、変態教師!!」
「まあまあ、送ってってやるよ。物騒だろ」
「……わかったよ」
「シオン・アスタール!」
ぽかっと頭を叩かれる感覚。
目の前には仁王立ちになっているライナの姿。
「……っ! す、すみません!」
辺りを見回せばテスト中らしく、皆自分の答案を埋めることで必死のようだ。シオンはというともうとっくに終わってしまい、暇をもてあましていたら眠ってしまったという訳である。
それも、目の前の教師と立場が逆転してしまう夢を見て……
「俺の授業で寝るとはいい度胸してんな。俺は寝たいの我慢してんのによ……」
不満そうに呟くライナは年下のシオンから見ても可愛らしかった。
「先生、好きですよ」
「……は?」
「こういう意味です」
シオンはライナのネクタイを引っ張った。自然、ライナは顔をシオンの方へ近付けてしまう。
軽く、舌を絡めたキス。
「覚悟しといてくださいね」
呆然と立ちつくしていたライナは、あまりの事態に意識を手放してしまった。
と、いうよりふて寝を決め込んだとも言えるかもしれない
―END―
もう一つのオチ
「……おい、シオン」
「――は! 何だ、フェリス。いい夢見てたのに」
先生を呼び捨てにするなよ、と言うとフェリスは
「お前は教師じゃなく生徒だろ」
は、そうだった。俺としたことが寝惚けていた。
気がつくと、授業は終わっていて、皆帰り支度を始めている。
「っと、ライナ!」
シオンは慌てて後ろを振り返った。そこにはいつものようにすやすやと眠っているライナの姿があった。
「ライナ、帰ろうぜ」
そう言ってライナを揺さぶり起こす。微睡んでいる彼の目は、見惚れてしまいそうになる。
「ん〜……うっせー」
ここでふと、夢の中を思い出した。
「……起きないと……」
キス、するぞとは心の中だけで呟いて。そっとライナの髪をかき上げる。
「……何してやがる」
「………いや、何も」
やはり何もかも夢通りにことが進むはずもなく、ライナはシオンがキスする前に起きてしまった。
「まあ、帰ろうぜ」
「ん〜」
いつものように眠っているライナを自転車の後ろに乗せてやりながら、シオンは心に決めた。
いつか絶対ライナにキスしてみせる、と。
―END―
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