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記憶の底にきっと(いえす!・ムカスコ) [ 8/196 ]
ある日、世界が終わった。
ある日、世界は始まった。
スコルプが目覚めるとそこは公園のベンチで、ふと隣を見ればそこには髪の長い男がいた。名前は……そうだ、ムカーディア。
知らないはずの名前を思い浮かべる。誰だっただろうか。けれど男は目覚めたスコルプに嬉しそうに微笑んだ。
「スコルプさん」
名前を呼ばれて、電気が走った。
でも、この男は誰だっただろうか。ムカーディアという名前だけは覚えているような気がするのだが。それ以上のことはわからなかった。
ただわかるのはスコルプという自分の名前と、その人生はある日終わったということだった。けれどそれが今、再び始まったのだと。
そしてその隣にはいつもこの男がいたのだと。
「……ムカーディア」
名前を呼べば彼はやはり嬉しそうに微笑んだ。その笑顔が、なんだかとても懐かしい気がした。
記憶の底にきっと
(その笑顔があるのだけれど今は思い出せない)
2009.05.06
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