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ひとまず、手を繋いで歩こうか(水火)-2- [ 19/196 ]



着いたのは水戸部の家だった。

水戸部が何人家族かは知らないが、どうやら今は全員出掛けているらしい。
タオルと着替えを貸してくれた水戸部は火神が着替えると自身の部屋へ案内してくれた。
ベッドの端に座らされる。水戸部は少し間をあけて隣に座った。


「………」
「………」


繋がれていた手は、水戸部が家の鍵を出す時に離れた。もったいないような、残念なような。
じゃあ今繋げば良いのかもしれないができるはずもなく。
……何なんだろう。

上手くいかない。こっちばかりが好きで、相手からは何も返ってこないようなそんな気がする。相手が女の子だったら違っただろうか? それとも同級生だったら違ったのだろうか?
自分がリードできていれば……


そうか、自分がリードすればいいのか。



思い付いたと同時に、水戸部をベッドに押し倒す。腰の辺りに跨がって表情を覗き込むとどうやらすごく焦っているらしい。かといって抵抗もされないのでそのまま口づけようと顔を近づける。

けれど、

「…………」

胸を強く押されて叶わない。あと少しだったのに、と残念に思う一方で、明白な拒絶に胸が痛む。


「センパイ、」


ついに、涙が零れた。
中途半端な優しさなんて、要らない。
振るならキッパリと振ってくれた方が幸せなのだと思う。

だから、早く拒めばいい。












――ドサッ




あれ?



世界が逆さまになる。

それが水戸部に押し倒されているからだと理解するのには時間がかかった。
少し濡れた目元に、唇が触れる。
水戸部の顔が目の前にある。目元に触れていたそれがやがて離れ、唇に触れた。柔らかな唇が重なる感触はどこか居心地が悪い。身をよじれば隙間からぬるりと舌が入り込む。

「ン…、ふぅ」

キス……ってことは、嫌いなわけじゃないのだろうか。
本当に水戸部は自分を好きで、付き合っているのだろうか。

そんなことがちらちらと浮かぶけれど、どうでもよくなってきた。


「俺、アンタが好きだ」


水戸部は笑って、それから再び火神の唇に触れた。
つまり、まあ、そういうことだ。



‐END?‐



→水戸部視点



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