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リスの話(黒火前提日→火) [ 17/196 ]
(リス……にしか見えなくなってきたんだが)
どうしようか、と額に手を当てる。熱はない。当たり前か。ここ数日ずっと続いているこれが熱によるものだとしたら自分はとっくの昔に自室のベッドに倒れていることだろう。
リス。そう、あれがリスに見えたのは、口いっぱいにステーキを頬張るヤツの顔を見た時だった。
その時は他意があったわけではなかった。ただその様子が、頬袋いっぱいに餌を溜め込むリスのそれによく似ていただけのことだった。
なのに……
あれ以来、火神が何かを食べているとその度にあのリスのイメージが思い出された。それがいつの間にか……
(もうリスにしか見えないってどういうことよ?)
何も食べていない、標準状態の火神でさえ、リスに見えるようになっていた。それも子リス……
おかしい。絶対に、おかしい。
そう思ったところでフィルターは外れてくれない。
「あまつさえ飼いたいだなんて……」
変態認定、間違いなし。
いつから小動物を愛する男になったんだっけ、とため息を吐く。しかも小動物ではない、同性の後輩を飼いたいだなんて。
日向が落ち込んでいるとどこからか急に声が聞こえてきた。
「ダメですよ。あのリスはもう僕が飼ってますから」
どこから?
――目の前から
「うわっ……いたのか、黒子」
「はい」
黒子は見た目にはいつもどおりの表情なのに、何かが違った。
そうだ、何か変なことを言ってなかったか……?
「あのリスは僕のですから」
「はい?」
思わず聞き返した。「リス」と黒子は言った。いつの間にか声に出していたのだろうか。
牽制。そんな言葉が浮かぶ。
「そうか、大事に飼えよ」
そう言って、黒子の頭に手を置く。
黒子が申し訳なさそうに微笑むのを見て、
いや、本当は最初からわかっていたのかもしれない。
(好き、だったのか)
リスに例えたあの後輩を。好きになっていたのだと。
自覚した途端に失恋なんて、本当についてない。
ただ、あのリスが幸せそうに何かを食べていたら、きっとそれが自分の幸せになるのだろう。
「大事にしろよ」
「はい」
‐END‐
黒火が書きたかったけど思い浮かんだネタが日(→)火で、
ところが日火を書いていたらいつの間にか黒火を前提とした日→火になり、
いつの間にか日向さんは失恋していました!(え)
たぶん日火より伊日の方が好きなので、きっとこのあとは伊月さんが慰めてくれることでしょう!ええ、別に書きませんが(え)
09.03.20
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