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癒えない傷を(ネウロ・竹笹) [ 155/196 ]
「竹田さん」
霸気のない顔をした彼が自分を呼ぶ時は、少しだけ声のトーンが違うのだ。
なんて、優越感。
さっきから笹塚はしきりに弥子を気にしている。
30分、あれば犯人がわかると弥子は言った。正確に言うならばあの助手が言ったのであるが。
わかる訳がないと思う一方で、もしかしたらと思わなくもない。
その時に見ることができるであろう弥子の表情を想像し、胸が高鳴るのを感じる。
だが、その時、ふと考える
自分が犯人だったと知った時、笹塚はどうするのだろう?
ようやく勝ち取りかけていた信頼にも似たものは何一つ残ることはないだろう。
それどころか、笹塚は二度と人を信じなくなるかもしれない。
その考えに行き着いた時、竹田の胸は更に高鳴った。
笹塚が傷付く
他でもない自分のことで
笹塚が傷付く
他の誰でもない自分のせいで
この男の胸の内に、深く、深く、自分の存在を刻みつけることができるのなら
捕まるのも悪くない
「そろそろ30分だな」
「…なあ、竹田さん」
笹塚が不安そうに竹田を見る。
「何か、嫌な予感がしないか?」
「刑事の勘のつもりか?…でも、大事にしておきなさい、そういうものは」
いつか、竹田が笹塚を裏切った時
彼はどんな顔をしてくれるだろう
怒り?
悲しみ?
それとも、今と同じ低いテンションで『あ、そう』なんてケロリと言ってしまうのか
どうやったら彼の傷になれるのだろうか。そう考えた時、弥子の助手という男の声がした。
「…行くか」
事件は迷宮入りへと進む筈だから…
‐end‐
竹笹も好きです
笹塚は竹田さん愛だといいなあ…なんて
サイ笹も好きですが(笑)
サイに傷つけられた(4巻ネタバレにつき曖昧に)笹塚が竹中に癒されてたらいいなあ…
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