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そして化物に捕まった(ルシクラ) [ 114/196 ]

化物というのはこういう存在を言うのだと、クラウは知った。


決してその言葉を一度も思い浮かべないような平穏なだけの人生を送ってきたわけではない。けれど『これ』は違う。本物の化物なのだ。

男は――人間の男の姿をした化物は、気味の悪いくらい穏やかな笑みを浮かべている。けれどそこには隠そうともしない殺気がある。

気を抜くまでもなく、一瞬で殺される。

今のクラウでは男に触れることすら叶わない。そう理解した途端ゾクリと肌が粟立つ。


そのくらい、男は化物だったのだ。



「君がクラウ・クロムか」

化物が口を開く。

「だったら、何だって?」


平気な顔で言ってやる。男が楽しそうに笑うのがわかった。


「何も」


急に腕を掴まれ、壁際へたたき付けるように押し付けられる。

そのまま唇に冷たい何かが触れた。
それが男の唇だと、すぐにはわからなかった。そのくらいその唇は冷え切っていた。
隙間から、入り込んでくるのは、やはり冷たい舌。ひやりと体中が冷えていくような恐怖と、内側から殺されていきそうな錯覚。
ようやく解放された頃には悪寒が酷くなっていた。

「…っ……何を」

ルシルは何も答えない。
ただ笑ってクラウの肩に歯を立てる。

その痛みに顔をしかめればルシルはより満足そうに微笑む。


「もう抱かれているんだろう?」

「……は?」


意味不明としか言いようのない言葉に、クラウは状況も忘れて体から力を抜いてしまう。


「……ああ、まだ処女か」


再度吐き出された言葉にルシルが自分を女のように言っているのだと理解する。と同時に振り上げかけた拳は、ルシルによっていとも簡単に止められてしまった。

再び重なる唇に歯を立てると、切れたのか血の味がした。ああこいつにも血が通っているのだなと変に冷静な自分が思った。



そして化物に捕まった




‐END‐


去年から考えていたルシクラです。

原作でもパラレルでも平気そうな感じに書いてみました。個人的にはパラレルのような。ところでどうしてルシクラ書きたくなったんだっけ。
書く期間が長すぎてきっかけの記憶は遥か彼方……

とりあえずエロじゃーと燃えた筈なのに書けず、微妙すぎる雰囲気だけになってしまいました。もっとアダルティな感じにしたかったです。次こそは…!


ところでルシクラってマイナーですかねやっぱり(今更)



09.04.21



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