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ヨン竹シリーズ‐5‐ [ 186/196 ]

カラン、とコップに入れた氷が音を立てる。
冷たい氷。

自分の心も、こんな風なのだと思っていた。





竹中を撃ったときの感覚が今でも偶によみがえる。

躊躇なく引いた引金。
夢の中で今なお続くあの場面は地獄のようだった。


頭の中を、知らない音楽が鳴り響き、ガンガンと五月蠅いくらいのそれに苛立ち、恐怖さえも感じる。
目の前で死んでいる竹中は、宮津が愛おしげに抱きかかえている。

結局自分のものになどなりはしないのに。なのに何故、こうも執着してしまうのか…

そんな悪夢が延々と繰り返される。







「で、どうだったんですか?」

「……何が」

「実験ですよ。どちらの方が抵抗がなかったか、という」



水の入ったコップを竹中の前に置く。透明なそれは竹中の困った顔を映していた。



「怒らないのか?」

「何をですか?」

「いや…キス、されただろ」

「実験でしょう?別にいいです」



一応、あの菊政克美が自分を応援してくれてのことだったらしいことはわかった。
だが、正直気にくわない。



「それで、結果は教えてもらえないんでしょうか?」


コップを持ち上げ、カランという音。
一気に飲み干す。


「結果…」

「そうです。結果」


みるみるうちに竹中の顔が赤くなる。そう、それでいい。

好きといってくれれば、それだけで



「抵抗なかった」

「…どちらが?」

「………」



そこから先を言葉にする気はないらしく、竹中は無言でヨンファを指さした。

つまり、そういうこと。



「おれが好きということですか」

「……わからない」

「まあ、いいでしょう」



やれやれとため息を吐く。

この鈍い人をゆっくりと振り向かせるのも悪くない。



僅かに残った水を飲むふりをして、氷を口に含む。そして、竹中の腰を抱き寄せた。



「もう一度すればわかりますよ」

「…いや、わからないだろ」

「つべこべ言わずにやってみましょう」


ニコリと笑うと半開きになった唇に自分の唇を触れさせた。
舌に溶けかけた氷を乗せて竹中の口内に押し込む。冷たさにビクリと奥に引き込もうとした舌をとらえて、互いの舌で氷を舐め合うように舌を絡め合う。

竹中の口角からは唾液と共に溶けた氷が伝い落ちていった。


完全に氷が溶けきると唇を離して、問う。



「いかがでしたか?」

「………」



ぼうっとして意識を飛ばしかけた竹中を抱きしめる。

次はどこかにデートに誘ってみようかと企むヨンファだった。






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