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ヨン竹シリーズ‐4‐ [ 185/196 ]
火傷でもしたみたいに、唇が熱い。
訳がわからなかった。
あの後ヨンファに散々
――好きです
――恋愛対象としても、一人の人間としても
――早く、堕ちてきてください
なんて囁かれて。
そんな言葉を聞いているうちにだんだん意識が戻っていった。
……好きって…
竹中にはヨンファの言葉が真実なのかわからなかった。
わかりたくもなかった。
ただ、ひどく唇が熱かった。
「…で、どうしておれに相談するんすか?」
「……いや、おれにもわからない」
竹中が訪れたのは何故か菊政のもと。先ほど現世に顔を出してきたばかりの菊政は、どことなく疲れたような顔で答える。
「つまり、副長はヨンファの本心が知りたいわけッスね?」
「………たぶん」
菊政は、そんなの見てればわかるのに、とため息を吐きながらも子どもに諭すように聞いた。
「じゃあ、実験とかどうでしょう?」
「実験?」
「副長が他の誰かと話してるとヨンファがヤキモチを焼くか、とか。あ、でもいつもそんな感じッスよね。意味ないか」
「いつも??」
いつもヨンファが(宮津や隆史もそうだが)他の人間に話しかける竹中を見て嫉妬の炎を燃え上がらせていたことを、竹中は知らない。
……あれに気づかないと言うのも相当だろう。
「ところでおれって猿みたいですか?キーキー言ってますか!?」
菊政は今まで胸の内にためていた言葉を吐き出した。
即ち、先ほど現世で如月に言われた言葉を気にしていたのだ。
「…?いや、別に…」
「竹中さん、ちょっといいですか」
竹中は突然現われたヨンファに腕を掴まれ、菊政から引き離された。
ヨンファは菊政を牽制の意をこめて睨む。菊政は呆れたようにため息を吐いた。
……なんか、この人たちってまどろっこしい
「副長、実験ッス」
菊政は死ぬ気で二人の後押しをしてやることにした。
…死んでいるとはいえ、正直、殺されそうな気がする。
いや、人間、死んだ気になれば何だってできる訳だし、
今はもう死んでるからそれこそ何だってできる筈だ
…だから
そっと、ふれるだけのキスを、竹中にした。
「おれとのキスと、少佐とのキス、どっちの方が抵抗なかったッスか?」
捨て台詞のように呟いて、脱兎の如く逃げ出した。
……もうすぐヨンファが烈火の如く怒り出すはずだから。
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