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雨(ガッシュ・サン清) [ 153/196 ]

 
 
もうすぐ梅雨だ、と天気予報で言っていたのを思い出したのは、唐突に雨が降り始めたからだ。
 
随分と大粒な雨粒はすぐに校庭を水玉模様に変える。体育は一つ前の時間だったから濡れずにすんだ。そんなことを考えながら問題に目を戻す。今は抜き打ちテスト中だった。
 
 
 
 
 
テスト結果はまあまあ。こんなものか、という感じだ。正直に答えると『……でも私よりは上よね』と暗い顔をした水野に言われた。 
 
 
げた箱に着くと鞄を手に走り去る生徒が多いことに気づく。雨のせいだろう。今朝の予報では降水確率20%だったから、傘なんて持ってこなかったのだろう。俺の場合は折りたたみ傘を鞄に入れたままだったから問題ない。この時期なら折りたたみ傘を入れっぱなしにしておくのが一番だ。そう思って水野を見ると彼女は満面の笑みを浮かべながら傘を持っていた。そして次の瞬間何故か泣いた。
 
俺は『偉い偉い』と言いながら水野の頭を撫でてやった。
 
 
 
 
 
靴を履きかえると、門の前に誰かが立っているのが見えた。
 
 
 
「……サンビームさん?」
 
 
 
驚いて、傘をさして走り出す。
 
 
「…どうしたんですか?」
 
「ああ、頼まれてね」 
 
 サンビームさんはニコリと笑うと傘を差し出してみせた。どうも母さんに頼まれたらしい。たぶん持っていかなかったとでも思ったのだろう。
 
 
 
「……無駄だったみたいだな」
 
「一緒に帰りましょうか」
 
 
 
 
 並んで歩きながら、何気ない会話をする。
 
 
 
 
 
 
 こんな日も、いいかもしれない。


―END―


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