ダメダメ戦隊 | ナノ 第20話 躾は親がするものです


俺はこいつの保護者ではない。
兄弟はもちろん親族ですらない。奴曰く「親友」で、俺としては「腐れ縁」の……まあ、友人だろうか。
友人というのはつまり他人であって、保護者ではない。

福島蒼はそんなことを考えた。



   躾は親がするものです



まあ、いつものことである。
「いつものこと」と言えてしまうのがなんだか悲しいけれど、いつものことである。
蒼がゲームセンター。そこでいつものようにアルバイトに精を出していると、いつものように津田紅がやってきた。
今日は金子士郎もいたためか、榊玄也もやってきた。
二人、見つめ合うと、喧嘩。

喧嘩といっても殴り合いのそれではなく、シューティングゲームやもぐら叩きやらで競い合っているだけなのだが、いかんせん声が大きい。更に、喧嘩腰。
すっかり名物になりつつある彼ら二人とはいえ、それを知らない人間はまだ多い。その誰かが心配になって警察に連絡したらしい。そのため警察の人間がやってきてしまった。
残念ながら、いつものことである。

「金子」
「はい」
「躾」
「福島さんこそ」
「俺はアイツの保護者じゃねーから」

警察はまずは店長と話して、問題の二人には注意、といったところか。特に仕事もないので金子と話している。

「……見かけない顔だな」
「異動ですかね」
「新人っぽくはないからな」

よく来ていたのはたしかまだ若い、気の弱そうな青年だった気がする。が、今店長と話しているのは若いながらもどこか貫禄のある男だった。
目つきはどこかギラギラしていて、警察と言うよりはその正反対に位置するようん印象を与える。その顔は誰かに似ている気がしたが、思い出せないので気のせいかもしれない。

「……なんか芸能人かなんかでいないっけ、ああいう人」
「さあ」





「いつもすみません童仏(どうぶつ)さん」


店長の口から、聞きなれない名前。けれど「いつも」とはどういうことだろうか。
金子を見る。金子も蒼を見た。やはり知らない名前らしい。
では問題児たちはどうなのだろうと観察を続けているとまた二人で喧嘩を始めていた。

「だから、俺の勝ちだ!」
「けど今度は俺の勝ちだぞ!」
「じゃあ次は俺の勝ちだ!」

いや、「次は俺の勝ち」ってまだやってないのに決めつけるなよ。
そうしている間にも堂仏さんとやらは二人に近づいていく。二人は気にせず口論を続ける。
――結果、彼らは同時に拳骨を落とされた。
堂仏さん、結構暴力的なご様子。

「お前ら、いい年して周りの迷惑も考えられないのか。もう少し静かにしろ」

お説教、というには簡潔な言葉。なんていうか名言集に載りそう。男前。と、一通り褒めてみるのはそれなりに気に入ったからだろう。
堂仏はそのまま二人に背を向けると帰っていった。



その後店長から聞いた話では、堂仏という男は時々やってくる刑事だということ。
最近この付近で事件が起こったらしく、その捜査をするついでにあのバカコンビのお説教もしてくれているのだとか。
「でも君らがシフト入ってる日も来てたと思うんだけどなあ」なんて言っていたけど、まあ、気のせいだろう。店長ちょっと天然入ってるから。


「結構いい人なんですね」
「な」
「で、誰に似てるかわかったんですか?」
「あー…………あ、わかった」

ふと、その人物の顔が思い浮かんだ。

「ヨウレンジャーのカレンダー長官に似てる」
「……特撮好きなんですね」

後輩は特に引いた様子もなく淡々と仕事を続けていた。ので、蒼も仕事を続ける。
カレンダー長官結構好きなんだよな、あの人また来ないかなあなんて思いながら。

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