ダメダメ戦隊 | ナノ 第6話−5 リーダーVSリーダー





さて、ブルーがホワイトとの戦いを終えて公園の中心へ目を向けると、レッドが膝をついたところだった。
悔しそうに地面に拳を振り下ろすその様子に、彼は負けたのだろうとたやすく想像がつく。

さあ、これで長い長い、馬鹿らしい戦いも終わりだ。自分もちょっとばかりマジになってしまったから馬鹿らしいなんてほんの少しだけ言いづらかったりもするのだが。
でもまあやっぱり馬鹿らしいんじゃないだろうか。ホントに。



周囲の戦いも終わっているようだし、それぞれの様子を見ればなんとなく勝敗はわかる。まずこれは自分だが、ブルーが1勝。少々納得がいかない気もするが1勝は1勝である。

それからイエローは……何かやる気に満ち溢れているようだが、負けたからこそ更に強くなろうとしている、と見えた。

ピンクは……真っ白に燃え尽きて何やらうわごとを……負けたんだろうな。

グリーンは……複雑そうに首を捻っている。よくわからないが勝ったのではないだろうか。やはり、負けたらもっとうるさいはずだし。


で、レッドが負けたということは2勝3敗。Eコレンジャーの負け、ということになるだろう。

明日からまたよくわからない特訓が増えたりするんだろうか、とため息を吐きながら考えていた時、レッドが叫んだ。




「これで俺の1勝1敗だ!!」



……まて、この台詞どこかで聞いたことがあるぞ。








   ***





つまりは、こういうこと……らしい。
レッドはブラックと3戦し、先に2勝した方を勝ちとすることを決めて勝負を始めたらしい。
何故そんな面倒臭いことをするのかとも思うが、変なところで面倒臭いことをしたがるのがレッドである。



「さて……次で最後だ」

「こっちの台詞だ」



もったいぶらないでさっさと始めてくれませんか面倒臭いんで。




「……お前にはさっき200M走で負けた恨みがある!」


負けたんかいレッド。

……ニートがたたったのだろうか。




「こっちこそ棒倒しで負けた恨みがある!!」



……待て、さっきから何をしてるんだお前たちは。






しかしそうなると最後になるであろう3戦目は……

まさか縄跳びとか言わないよなと呟きかけたブルーの心の声を遮るような、二重奏。




「「さあ殴り合うぞ!!」」




その言葉を合図にしたようにレッドがブラックに殴り掛かる。とにかく勢いよく突っ込んでいき、顎を狙ったパンチ。


「レーッド・パーンチ!!」


その言い方は頭部があんぱんなヒーローのそれを思わせたとかそんなことは誓ってない。きっと。
だって子供がトラウマになるじゃないか。


突っ込むだけのレッドの攻撃を避けるのはそう困難なことではない。だから、ブラックは体を斜めに傾けてそれを避けると体制を立て直し、レッドに拳を振り上げた。


「BRACK・ハリケーン!!」


……どこがどうハリケーンなのかは、基本的に必殺技では聞いてはいけないお約束になっている。
ついでに彼の台詞に何らかの違和感を覚えたとしてもそれはブルーが気にすることではない。

その拳もやはり単純に突っ込むことしか知らないようで、レッドにたやすく避けられる。



「………」


すると、それまで黙って見ていたホワイトがわずかに体を強張らせた。
お面で表情はわからないが、想像するに眉間にシワを寄せたような反応だった。


「………」


しかしまた腕を組んで彼等の戦いを観察し始める。

……いつ終わるんだろう。







「レッド・ドレッド!」


赤いドレッドって何?





「でりゃあ!」


技名も面倒になってきたらしい。




「ドスッ!!」


ついに擬音を口で言い始めちゃったし。









だからこれはいつ終わるんだよいつ。





何十回目のパンチが何度目に命中したのか。数えるのも馬鹿らしくなるくらい時が流れた。
どちらのお面も無傷なのは、お互いが気を使ったからだろうか。どうでもいいけど。


いいかげん帰りたい。




と、その時。

(ブラックとレッド以外は)静かな公園に電子音が響き渡った。



「………」


どうやらそれはホワイトの携帯から流れていたらしい。彼は二つ折りのそれをパカッと開き、ディスプレイを覗き込む。

彼はそのままブラックの方へ歩き出す。


「……ブラック」

「何だホワイト。今いいトコ……」

「時間だ。帰るぞ」



ぐいっとブラックの服を引っ張るとそのまま大きな猫をひきずるように歩き出す。
それに慌てたようにレッドが止めに入る。


「待て、まだ勝負の途中だぞ!」

「続きは次回にさせてください」


それだけ言うとホワイトはスタスタと歩いて公園の出口へ向かっていった。……もちろん、ブラックを捕まえて、だが。



「……何だアレ」

「敵前逃亡ってヤツ?」

「……ん」




いつの間にかアンチは誰も残っていなくて、公園に残された変人は5人(あ、これじゃあ自分も変人だと認めたようなものだ)に数を減らしていた。




(しかし……何だったんだ、アレ)



できればもう関わりたくないのだけれど。
もちろんそんな都合の良い未来が待っているはずもなかったりする。


















「お前さっきさんざんBLACKの綴り間違えてただろ」

「間違えてねぇよ!!」

「綴り」

「う」

「綴り」

「……びーあーるえーしーけー」

「中学の単語からやり直しだな」

「えー!!?」





‐END‐




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