ダメダメ戦隊 | ナノ 第6話−4 たまには戦います





はっきり言って、無意味以外の何ものでもない。
そう、ブルーはため息を吐いた。

公園のあちらこちらではEコレンジャーの誰かとアンチの誰かとの戦いが起きている。殴り合い、蹴り合い、どう考えても餓鬼の喧嘩だ。
一応女性陣はカードバトルという比較的大人しく、ある意味一番オタクチックな戦いを繰り広げているらしいが、それはそれでため息の原因だ。


おそらくこの中で平和を誰よりも望んでいるのは自分に違いない。それも、かなり切実に。





   たまには戦います





確かに面白い。
それはもう、普通ならば腹を抱えて笑い転げてもおかしくない面白さだ。

……しかし、ブルーがしっかりとその頭数に入っているのが問題だった。




(…………まあ、戦わないかもしれないし?)



ちらっと正面の男を見る。比較的まとな人間に分類される、と先程分析したがそれが正しいのかはいまひとつわからない。
アンチのホワイト(無論ブルーがあんな長い名前の正式名称を口にする筈がない)。お面をつけていてもわかる。彼の目はしっかりと同じアンチのブラックを捉えていた。



……戦意はない、ということだろうか。





「どうだこの山!!!でかいだろ!!」
「俺のがでかいね!!」
「いや、俺の方がでかいね!!!」
「俺のだ!!!」
「俺だ!!!」



ブラックとレッドは、砂場でそんな言い争いをしていた。
……………幼稚園児?



「……つか、何の勝負だよ」




思わずそう呟いたのと、急に背後から殺気を感じたのはほぼ同時だった。




「――っ!!」


振り返り、今にも跳んできそうな蹴りを避けようと体に力を入れる。だが気付いたのが遅かった。ぎりぎりかもしれない。
スローモーションのように自分と相手の動きが感じられた。相手の動きがゆっくりであるが、同時に自分のそれももどかしい程緩慢なものに感じられた。
そして、その動きはブルーに触れる寸前に止まった。



「よそ見するな──お前の相手は俺だろ?」



戦意が無いなんて勘違いも良いところ。アンチホワイト、静かに戦意バリバリのご様子である。

……運命はどうあってもブルーを第三者にしてはくれないようだ。



「………はぁ」




漏れるのはため息だけ。
ホント、自分の周りには他人を面倒事に巻き込む輩が多すぎる。









面倒臭い。舌打ちし、すぐに間合いを取る。


「………えっと」



本気?
聞きかけて、止めた。説得なんて面倒過ぎる。それだったら最近体を動かしてないし、たまにはこういうのも悪くないだろう。

微笑んだブルーの表情はイエローのそれにどこか似た、好戦的だと思わせる何かを漂わせていた。
正直、面倒ではあるが、嫌いという訳ではなかったから。



「ま、止めても無駄だろうし?」
「さっさと始めるぞ」



話す時間さえ勿体ないとばかりにホワイトはブルーを見る。はいはい、せっかちな子だねぇなんて思いながら、ブルーは頷いた。


それが合図だった。





「―――っ」


頬を掠めるようにしてとんでくる拳を避ける。チリッとした痛みが頬に走り、ああ切れたかなと思う。

そのまま臑を思い切り蹴ろうとしたが、どうやら気付いたらしい相手に軽く避けられる。


むやみに攻撃しても自分の体力を削るだけのようだ。ホワイトの蹴りを避けながらそう判断したブルーは攻撃を見切りながらタイミングを探す。

そして、ある事に気付いた――








(何だ、自分こそよそ見してるじゃないか)



とはいえよく見ないとわからない。ほんの僅かに、先程から注意がそれている。
どうやらブラックとレッドの戦いが気になるらしい――というよりはブラックを心配しているというのが近いように思う。


一見隙の無いように見えたホワイトにも、僅かな隙があった。注意がそれるのを確信すれば隙はすぐに見つかった。


(これならいける……な)



最後にホワイトの蹴りを避けようとする前に、気付いた奇妙な違和感はとりあえず捨てておく。


それまでよりも更にギリギリのところで避け、ホワイトの隙を突く。

腹に、重いパンチを一発。



「……ぐっ」


体をくの字に曲げて苦しむホワイト。彼が立ち直るのを待ちながら、ブルーはため息を吐いた。
まだまだ終わりそうにない――この勝負。

おそらく彼等の力は互角か、それに近いものがある。少なくとも今のこの状況では。
この後如何に相手にダメージを与えるか。持久戦でスタミナを削るか。そうならないと勝負の行方がわからない。


となれば時間がかかるだろう。

そこまで考えて、気が付いた。


(……そんなに強くは殴ってないぞ?)



ホワイトが、体をくの字に折り曲げたままだ。




「………?」




どういうつもりなのだろうか。
ブルーが声をかけようとした時――




「負けた」

「――は?」

「負けで良い。腹が痛くて戦えないってことで」




(『ってことで』ってなあ……)

そんな、ぴんぴんした表情で言われてもかなり胡散臭い。胡散臭いどころかまず嘘だろうとわかる。


そう思っている間にもホワイトはスタスタと歩き始めた。レッドたちの方へ――






(心配、なのか?)



勝負中にも見てたくらいだから、やはり心配なのだろう。自分の戦いを投げうるくらいには。

その後ろ姿にまた、違和感を感じたがまあ気にしないことにしておいた。








――Eコレンジャー、とりあえずブルーの勝利?


残る戦いはリーダー戦のみ





- 13 -


[*前] | [次#]
ページ:


TOPへ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -