すきなひと(クゥとライナ♀)
2011/06/02 22:22
彼女はいつも誰かに好かれていた。
兄たちも。兄のような幼なじみたちも。みんなライナが好き。
こんなに可愛い子がいるのに、一人もこっちに目を向けないなんてどうかしてると思わなくもないけど。だからといってクゥがライナを恨むこともない。
だって、大事な友達だから。
誰よりも大好きな友達だから。
でも、そろそろ彼女も誰か一人を決めるべきじゃないかなあ、なんて思う。
「ねえ、ライナはどんな人が好き?」
「枕」
「……それ、物でしょ」
「じゃあ布団?」
「…………」
質問を変えてみる。
「リル兄さんのことはどう思ってる?」
「んー、何考えてるかよくわからん」
「あはっ」
「あとむっつりっぽい」
「……じゃあスイ兄ちゃん」
「まあ幼なじみだな」
「リーズ」
「頭良い」
「レファル」
「…………」
ライナの答えが、止まる。
さあなんて答えるのかなと期待と不安が混ぜこぜになったような気持ちで待つ。
すると彼女は真面目な顔で……
「父親?」
「…………へ?」
え、それ、可哀想じゃないかな。
「なんか背中広いし」
「うん」
「あと安心するし」
「うん(これは脈ありってことなのかな?)」
「そんな感じ」
「そ、そう……」
聞いてみたものの、ますますわからなくなる。
結局ライナは誰が一番好きなんだろう。鈍感って怖い。
でも、ライナが誰か一人を選んでしまうのは怖い。
だっていつか、クゥから離れてしまうということだから。
だけど、
「あ、それからクゥは大好き」
みんなが欲しがっている言葉をさらりと投げかけられる。
「……うん」
まだ、ライナの中では自分が一番なのかな。
だとしたら、すごく、嬉しい気がする。
「ライナ、大好き」
もうしばらくは、誰も選ばないままでもいいよ。
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