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あいのこくはく(レファライ)
2011/06/02 22:22

ふと目を覚ますと誰もいなかった。
どうして誰もいないのだろうと考えて時計を見る。もうとっくに下校時刻を過ぎていた。校庭からは部活動に勤しむ生徒たちの声が聞こえてくる。それがどこか寂しく思えたのは、隣に誰もいないからだろう。
どうしたのだろう。
目が覚めるといつも誰かが待っていてくれたのに。今日は誰もいない。リルも、スイも、クゥも、リーズも、レファルも。
なんだか悪い夢でも見ているようで、胸の奥から不安がこみ上げる。
まるで世界に一人、取り残されてしまったような。

……そんなはずないのに。



立ち上がると、椅子の足が床に擦りつけられて、教室に音が響く。横にかけてあった鞄を肩にかけ、ふらふらと廊下を歩く。
一人で歩く廊下はやっぱり寂しくて。あの背中を探すけれど廊下にはいない。
まだ教室にいるのだろうか。
ゆっくりと階段を上がる。すれ違う生徒ももういない。どこか遠くの教室で静かな話し声がするのがようやく耳に届くくらい。

ようやく着いた教室のドアを開ける。

「ライナ?」

ようやくそこに桃色の髪を見つけて、彼に気づかれないように安堵した。
そしてようやく、眠たげだった動きを変える。ヒールのある靴を履いていたら、カツカツと忙しそうな音がするように。実際にはライナが履いていたのは上履きだったからぺたぺたと音がするだけだったけれど。

それで、一気にレファルの前までやってくると、

「遅い」

と、言ってやった。


だって、いつもはちゃんと迎えにくるくせに。
クゥもスイもリルもリーズも来なくたって、レファルだけは迎えに来るくせに。
なのにどうして今日はこんな、教室に誰もいなくなっても、ライナの周りに誰もいないのか。
ライナが眠りから覚めるときはいつだって、誰かがそこにいたのに。少なくともレファルはいつだっていたのに。

それなのに今日は誰もいなくて。目が覚めたら一人で。だから、まずレファルを見つけなくちゃって思って。

だから、これでも怒っているのだ。
普段は怒るとか、疲れるからそんなにしないのだけれど。今は怒っている。レファルが反省した様子もなく驚いているのにも腹が立つ。

「……遅いって?」

しかもこの男、まだ事態を把握していない。

「遅いんだよ。もうとっくに下校時間過ぎてるじゃねーか」

イライラしながらレファルの長い髪を引っ張ってみる。すると痛そうに顔をしかめたから少し気分が良くなる。
「……なあ、ライナ」
「あ?」
レファルは何か言いづらそうに視線をさまよわせる。
「その……リーズから何か言われた?」
「リーズ?」
リーズというのはやはり、あのリーグルワーズだろうか。しかし特にリーズから何か聞かされた記憶もない。

「じゃあスイは?」
「何で」
「リルは?」
「だから何で」
「何も、言われてないのか?」

何も、って。
そもそも何を聞かされたと思っているのだろう。
それがレファルがライナを迎えに来なかった理由だとでも言うのだろうか。



「……レファル、誰かと付き合うの?」


それが一番有り得ることだけど。一番有って欲しくないことでもある。

「違う」

そっと髪を撫でられる。
でも、いつもと違う。いつもよりためらいがちな気がした。

「距離を置いた方がいいかと思って」
「何で」
「ほら、お前も年頃のオンナノコだし」
「やっぱり彼女ができたんだ」
「そうじゃなくて……」
「じゃあ、俺が邪魔になったんだ」

ずっと昔から、眠るライナを迎えに来るのはレファルだけで。
レファルが迎えに来るとわかっていたからライナは安心して眠ることができて。
きっとレファルがいなくなったら眠ることなんてできないのに。


「邪魔じゃない」

髪を撫でられる。
でも、だったらどうして距離を置くなんて言うんだろう。

「レファルはずっと迎えに来ればいいんだ」

馬鹿なことを口にしたと思う。
それでも、それがライナの本心だった。

「そうか」

答えるレファルの声がどこか大人びていて。こんな時だけはたった一つの年の差を大きく感じてしまう。

「そうかもな」

そんな風に優しい言葉をかけてくれるから、ライナはレファルを頼ることをやめられないのだろう。
ということはきっと、レファルが悪い。

「レファルはさ、どうせすぐフラれるんだし。ガサツだし。アホだし。お人よしだし。恋人とかできっこないよ」
「あーうん」
「だから、俺がそばにいてやるよ」
「うん――は?」


そうしてレファルが驚いた隙に、唇に触れてやる。
拭われたら殴ってやろうかと思ったけれど、ポカンと口を開けたまま固まっていたから、思わず笑ってしまった。







「えっと……付き合い始めました」
「むにゃ」
「「「「やっとか」」」」






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