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どこかの誰かのお話





時々夢に見る。
それは決まって、私自身が不安に思っている時か、悲しいと感じている時。

部屋一面に広がる赤、赤、赤。そしてその真ん中に横たわる2人の男女は、もう二度と呼吸をすることはない。絶望に染まった表情を変えることはない。
そんな2人を私はただ呆然と立ち尽くして見ていた。そして傍らに佇むそいつに向かって問いかけるのだ。


「ど、して…なんで、なんでなのよ…!!」


そいつは決まって、いやらしく欲望に歪めた瞳でこう答えるのだ。


「愚問だな。なぜか、だと?それはお前が”鍵”であるからにして他にはないのだ」





「私はそんなの知らないッ!!」


自分の絶叫で目が覚めた。ゆっくりと周りを見渡すと、そこは見慣れた今の私の部屋。置物、模様、家具の配置。すべて私が選んで置いたもの。大丈夫、あれはただの夢だわ。


「姫様?どうかなさいましたか…?」

「ロゼ…いえ、なんでもないわ」

「また、あの夢を見たのですか?」


はッ、とロゼを見る。何年も私に仕えていた侍女だもの。私のことは何でもお見通し、ってわけね。
ふぅ、と一つ息を吐くと、ロゼはほかほかと湯気の立つマグカップを私に手渡してきた。中身はホットココアのようで、甘いカカオの香りに気持ちが少しずつ和らいでいくのが分かった。


「ごめんなさい、ロゼ。私がしっかりしないといけないのに、あなたにはずっと迷惑ばかりかけているわ…」

「とんでもございません。今は亡きあなた様のお父上とお母上より託された命を果たすのが私めの務めでございます。…それに、幼少よりあなた様にお仕えしているのです。迷惑などと思ったことは一度もありませんよ」

「ロゼ…」


にっこりと笑みを浮かべるロゼにいつも救われている私がいる。さて、今日も昼から塾がある。生憎と宿題は昨日のうちに全てすませているから、あとは自分の支度をするだけだ。マグカップを片し、洗面所に移動する。顔を洗い、ふと顔を上げた先…鏡に映る自分の顔を見て嘲笑を一つ。


「ふ…ひどい顔ね」





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新章スタートであります。完全オリジナルゆえ、オリキャラや至らないところがたくさん出てきますがどうか温かい目で見守ってやってくださいませ…




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