我慢の限界はご存知ですか?※
「…………」
「ご、ごめんって悟飯…」
「…むぅ」
ただいま悟飯が拗ねております。激おことまではいかないがおこだ。まぁ原因は私なんだけどね。
エマと別れて悟飯を迎えに行くとふくれっ面をした悟飯がいた。どうやら悟飯は私とエマで喫茶店に行ったことにお怒りらしい。そんなことで怒らんでよわが弟よ…
「えっと、えっと…ほ、ほら、夕飯の前にケーキ食べたらおなか一杯になって食べられなくなるじゃん?」
「僕サイヤ人だからそんなことない」
「ぐッ…」
ああ言えばこう言う。てか、あんた今まで自分がサイヤ人だっていう権利振りかざしたことなかったよね?ね?なんで今それを主張するかなぁ。まぁ、確かにサイヤ人の胃袋はブラックホールだけれども…。あぁ、自分で言ってて悲しくなってきた。私もパンピーと比べたら十分食べる方だったわ。
塾の屋上で拗ね倒れる弟とそれを宥める姉の図。なにこれ珍妙。完全に尻に敷かれてね?
「ごはぁーん…」
なんとも情けない声が出たものだ。ぐじぐじといじけだした私に見かねたらしい悟飯がため息を吐いた。ちょ、吐きたいの私なんだけど悟飯や…。ちくしょう、ため息吐き返してやる。そう思って息を吸い込んだ瞬間、突然視界が反転した。ぐりんッと回った視界。気付けば私は地に背中を付けていて、夕焼け空を背負っている悟飯はにんまりと目を細めていた。
……え、どういう状況これ。てかお前そんな目する子だった!?
「え、ちょ、悟飯…?」
「お姉ちゃんってば、やっぱり何にもわかってないね。僕がただ置いて行かれたことに拗ねているとでも思う?」
「え、違うの?」
「当然」
言い放った悟飯はがぶり、と。文字通り私の口に噛みついてきた。ちょちょちょちょお…!ここ屋上!塾の上!誰か来たらどうすんの!?唇が離れる合間合間にそう訴えれば、悟飯はいけしゃーしゃーとのたまった。
「鍵はかけてるよ」
そういう意味じゃない。そう思うものの私の口内を蹂躙する悟飯の舌に意識を持っていかれて、結局は悟飯の思うままになってしまうのだけれど。
「ふッ…んぅ…」
「はぁ…お姉ちゃん、もっと舌だして?」
「ふはッ…お前、こんなのどこで覚えてきた…!」
「さあ?どこだろうね」
とんだ小悪魔になったもんだ、わが弟は。あっちこっちに動き回る悟飯の舌に必死について行こうとするのに気を取られていると、ひんやりとしたものが私の腹を滑った。びっくりして目を見開くと、ぼんやりと青く光る双眸が私を捕らえた。おま、超サイヤ人になりかけてんじゃん…!極度の興奮状態に陥るとなる可能性もあるってこないだベジータさんが言ってたけど、こう意味の興奮状態ではないと思う。決して。
慌てて服の上から悟飯の手を押さえにかかるものの、いとも簡単に頭上にひとまとめにされてしまう。ちょ、待って待って待って!!
「ねぇ悟飯待ってってば…あッ」
「待たない。…僕はもうずっと待ったもん」
もん、じゃねーよもん、じゃ。可愛いけど可愛くないぞお前…!
なんて、そんな風に思える余裕も今の私には微塵もない。服の中を弄る悟飯の手が悟飯じゃないみたいで、怖くて怖くて仕方がない。まるで悟飯が別人みたいで嫌だ。ねっとりとしたキスをやめた悟飯の唇が首筋に触れた瞬間、今までせき止めていたものが崩壊して私の両目からぼろぼろと涙があふれ出てきた。
「ふぐッ、うぅ…」
「ッ!?おね、ちゃん…?」
「ごはッ…も、やだぁ…!」
年甲斐もなく子供みたいに(子供だけど)泣きじゃくる私に戦慄いたらしい悟飯は、私をゆっくりと起こすと、さっきの勢いが嘘のように優しく抱きしめてきた。
「…ごめん、お姉ちゃん、ごめんね?お姉ちゃんを怖がらせるつもりじゃなかったんだ…」
「ちがッ、私もごめん…。悟飯が、なんだか知らない男の人に見えて、怖くなって…」
「僕のこと、嫌いになった…?」
「なってない!悟飯のことは好きだよ!でも…」
「うん、知ってる。…僕、ちょっと焦ってたんだ。いつかまたお姉ちゃんが僕の手の届かないところに行ってしまったらって考えてたら、気付いたら体が勝手に動いてた。言い訳かもしれないけど、僕、もう二度とお姉ちゃんを失いたくないんだ…」
痛いほど私を抱きしめる悟飯の背中を軽くとんとん、と叩くと、渋々といったようにほんの少しだけ私から体を話した。顔を覗き込むと、さっきまで青かった瞳は元の黒色に戻っていてほっと胸をなでおろす。目尻ににじむ悟飯の涙を親指で拭い、そこにそっと唇を落とした。
「大丈夫、私はもうこの世界の住人だよ。ずっと悟飯のそばにいる。あんたが嫌がっても、離れてやんないんだから」
「あは…それは僕のセリフだよ」
ようやっと笑顔が戻ってきた悟飯。もう一度目を合わせた私たちは引き寄せられるように、どちらかともなく唇をもう一度重ねた。
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悟飯→→→→||→←夢主の回でした。
一線を越えたい悟飯くんだけど、そんな悟飯くんにビビるお姉ちゃん。
ちなみに未遂です。
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