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言い出しっぺの責任の取り方※



「いい天気だねぇ」

「外に出てよかったでしょ?」

「…そう言うことにしとく」

「素直じゃないなぁ」


くすくす、とおかしそうに笑う悟飯を横目に川縁に寝そべった私は空を仰ぐ。雲一つない晴天は太陽のせいで些か眩しい気もするが、平和の証だと思えばそんなのどうってことなかった。
この川は、以前私と悟飯が流星群を観測しに来た時の、滝の下の川だ。パオズ山の少しばかり奥詰まった場所に位置するここは、水の音に混じって動物たちの声で賑わっている。

あ、スズメが私の腹にとまった。かわいい。


「…そういえば」


ぽつり、とこぼした悟飯はがばッと勢いよく起き上った。それに驚いたスズメが飛び去るのを視界の隅に捕えながら私も飛び起き硬直する。え、なに。どうしたのいきなり。びっくりしたんだけど。ぐりんッと振り返る悟飯に怯みつつも決してそれを顔に出さない私ってばとんでもなくかっこいいんじゃないのだろうか。え、違う?ごめんあそばせ。


「なに、どうしたの」

「約束」

「………は?」

「お姉ちゃんにまだ約束守ってもらってない」


むっすーん、とハムスターよろしく頬を膨らませる悟飯に首を傾げた。約束ってなんのこっちゃ。私、あんたとなんか約束したっけ。あ、ごめん、ごめんってば!!おねぇ頑張って思い出すからそんな泣きそうな顔しないでぇぇえええ………!!!
うるうると今にもこぼれそうなほど目に涙を溜めた悟飯。待ってねぇ待って。おねぇ超頑張るからほんと待って。

うーん…と唸りながら記憶の中を探しまわるが、どうにも思い出せないのだ。そうこうしている間にもほろり、と目尻から涙が……ウワァアアアアアアアアア!!!!泣かないでぇえええええええええええ!!!!


「ご、ごめん悟飯…私わかんないや…。基本そういう大切なことは覚えてるんだけど…」

「……まぁ、お姉ちゃんだし。なんとなくそんな気はしてたよ」


なんかさり気なく貶された気がするんだけど。え、これ突っ込んでいいの?やめといたほうがいいの?どうしたらいい?……あ、スルーの方向ですねわかりました。


「お姉ちゃん、目瞑って?」

「なんで?」

「いいからいいから、早く!かわいい弟のお願い事だと思って!」

「うぅむ…」


早く早くと急かす悟飯になんだか釈然としないけれど、目を閉じるくらいなら…
そう思って素直に目を閉じた。とゆーか、目閉じてどうするんだろう。念仏かなにか聞かされるのでせうか。違うか。


「少し顔上げて?」

「こ、こう…?」

「うん。しばらくそのままでいてね。あ、目も絶対開けちゃダメだよ?」

「お、おうよ…」


なにやらごそごそと音が聞こえるけど、あんた何してんの。おねぇめっちゃ気になるんだけど。そう思って首を傾げた瞬間、唇に何か温かいものが触れた。思わず見開いた目。かち合った悟飯の大きな目がゆるり、と細められ、なんだか背中がぞくぞくした。
触れてはくっつき、を何度か繰り返したあと、今度は長く深く口付けられる。私の口が食べられてしまうのではと思うくらい深いそれに、頭はぼうっとするわ熱いものが体内をぐるぐる循環して意味わかんないわで私自身パニックになっていた。

……結論、私今どうなってるの。


「、…はぁ……はむ」

「んぅ…」


おおよそ自分が出した声だとは認めたくないような高い声が出てぐわッと全身が熱くなった。気付けば地面に押し倒されていて、悟飯が私に覆いかぶさるようにして唇を押し当てる。


……あぁ、思い出したわ。約束って言うか…うん。そう言えば言ったね、私。セルゲーム終わったらキスしてもいいって。
なるほど、全てに合点がついた私は荒ぶる心臓をぐっと押さえつけ、そっと悟飯の首に腕を回した。そうくるとは思っていなかったらしい悟飯は一瞬びくり、と体を強張らせたけれど、すぐに私が受け入れたことに気付いたのかさらに深く唇を押し当てる。


「む…は、ぁ…」

「はぁ…はぁ…」


ようやく離れた悟飯と私の唇を銀色の糸が繋ぐ。それがぷっつりと切れた頃、未だ息を切らす私を悟飯がぎゅうっと抱きしめた。


「……お姉ちゃん、かわいい」

「ッ…や、やめろ、恥ずかしい…」

「約束、思い出してくれた?」

「あー、うん…しっかりバッチリ思い出しましたとも」

「そう。よかった」


嬉しそうに笑う悟飯の声が耳元でする。それが何だか悔しくて、くすくすと笑う悟飯の顔を引きはがし今度は私から悟飯にキスしてやった。途端に顔を真っ赤に染めたかわいくて愛おしい弟にしたり顔。


「形成逆転でしょうか、悟飯くん?」

「〜ッ…!ばかッ…」


私の肩に顔を埋める悟飯の頭をなでる。
悪態をつこうがかわいい君でしかないのだよ。





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言いだしっぺはシュエちゃんですからね。悟飯くんはただ自分が言った言葉には責任を持ってほしかったんです。
ただちゅっちゅさせたかっただけのお話になりましたが……悔いはない(キリッ)


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