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君が笑う世界の色



「………あつ、」


トランクスさんが未来に帰ってから数日。パオズ山に夏がやってきて、窓の外から絶えず蝉の鳴き声が聞こえる。どうりで暑いと思ったわけだ。壁の時計を見ると朝の8時を指している。……よし、あと3時間は寝れるな。そう思い布団に包まった瞬間。


「お姉ちゃんおはよう!!」

「ぐぼふぉああああッ!!!!」


再び睡眠を貪ろうとした私の腹に何かが飛び乗った。危うく口からいろんなものがこんにちはするところだったよ。悶絶しながら飛び乗った張本人を睨むと、それはもう清々しい笑顔をしていることで。

…え、なに。なんなの、悟飯。私に何か恨みでもあるの。


「……何か言うことは」

「おはよう」

「違うそれ違う。お願いだからまず最初に謝罪して。じゃないと私ただの飛び乗られ損だから」

「ごめんね…」

「う…」


うるうると上目遣いで見上げてくるその顔はずるいと思います。あ、あざとい…けどそれ以上にかわいい…うちの弟かわいい…尊い…
そして今日も私はそんな悟飯の顔に負けたのだった。だって悟飯だもの。


「ねね、お姉ちゃん、早くご飯食べて外行こうよ。散歩しよ!」

「えぇー…外暑いじゃない。嫌だよ。引きこもりたい」

「だぁーめ!!ほら、早く布団から出て!行くよ!!」

「ちょおッ!!待たんか!!」


ぺいッと布団を放り投げた悟飯は私を担ぎ上げ、いけしゃーしゃーとのたまりながら居間に足を向けた。あぁ、さらばお布団愛しの恋人よ…あなたのことは一生忘れないわ…


「シュエちゃんってばなぁーに言ってるだか!冷めねぇうちにさっさと朝ご飯食べてしまうだよ」

「うッ…うッ…まだ寝ていたかった…」

「また夜更かししてたんか?早く寝ないと体に悪いだろ?」

「だって読み出したら止まんなくて…」


それもこれも私を誘惑する本が悪い。一度本を開けば最後まで読みたくなるのが本好きの性なのだ。私の夢は部屋を図書館にすることですけど何か。ちなみに嘘です。

それよりもみなさん、お気付きだろうか。こうやってお父さんたちと会話してるのはいいんだけどね、私まだ悟飯の肩に担がれたままなんだよ。つまりお尻を向けて喋っていたわけで。あぁもうなにこれどんな仕打ちなの。それよりも何一つ突っ込まない両親はどうなの。ねぇ。何とも思わないの?私のこの姿を見て。


「…悟飯、降ろしたまえ」

「あ、忘れてた」


なんだと。
ようやっと足が床に着いたことに酷く安堵を覚えた私はもう完全に目が覚めた。二度寝?できるわけないじゃんおめめパッチリだよ。
全員が食卓についたのを見計らって、いただきますを言う。朝っぱらから豪快に食べるお父さんに胸焼けを起こしそうになりつつも自分の分をちまちまと平らげる。とてもうまひ。


「……いきなりだけんども、重大発表があるべ」


不意にお母さんが真剣な顔をしてそんなことを言うもんだから、一同思わず動かしていたお箸を止めてお母さんを見る。え、なになに。どうしたのさ。


「実はな…」


ごくり、生唾か口の中のものを嚥下する音かどっちかわからない音が沈黙の中に響く。ちなみに後者はお父さんである。
深刻そうに言うお母さんは病気か何かになってしまったんだろうか…。そうだったら大変だ。ご飯なんて食べてる場合じゃないよ。お母さんはそっとおなかに触れ、重々しく口を開いた。


……待って、私なんのことかわかったかも。


「実は………おめぇたちに弟ができるんだべ!!」

「「ぶッ!!」」

「うわ、きたなッ!!!」


2人分の口に入っていたものが宙を舞う光景はなんと汚いことでしょう。ちゃっかり自分の食器を抱えてテーブルから離れた私ってすごいと思う。げほげほとお父さんと悟飯が咽ながら自分の吹き出したものを片していく。そんな2人を横目に、呆れ返ったような顔をしたお母さん。


「ねぇお母さん、もう性別がわかるの?」

「あぁ。生まれるのはまだまだ先だけんども、今のうちに報告しとこうと思って」

「ふーん、弟ねぇ。随分年下だなぁ。楽しみだよ」

「生まれたら、またお手伝いお願いするべ?」

「任せてよ」


まだ見ぬ弟に思いを馳せながら朝食を平らげた私は、未だ放心する男2人を放置して台所に食器を持って行く。家族が増えて喜ばないわけがない。服とかベビーグッズは昔使ってた私のや悟飯のがあるし、そうなれば名前も考えないといけないよねぇ。
そんなことを思いながらさっさと部屋に戻った私だけれど、数分後硬直からとけた悟飯が私の服を引っペがし、寝巻きから着替えさせたのちまたもや肩に担がれて外に連れ出されたことはここだけの話。






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