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急展開で急上昇






夕飯の片付けをしている時、ふと誰かに呼ばれたような気がした。


「エマ?」


気のせい…?何となくエマに呼ばれたような気がしたんだけど、そもそもあの子の家は都市部で、物理的にこんな辺鄙な山奥にまで声が届くわけないじゃん。


「お姉ちゃん?どうかしたの?」

「ん?…いや、何でもないよ」

「そう?…それより、今日は星が綺麗みたいだよ。せっかくだし、外でドラム缶風呂炊かない?」

「お、いいねそれ!露天風呂しようか!」

「じゃあ僕、お風呂の準備してくるよ」


たったかた、と外へ飛び出した悟飯を見送る。いやぁ、ドラム缶風呂とか久しぶりだなぁ。最近はずっと家の中のお風呂だったから。


「たまにはいいもんだよねぇ」

「お、お姉ちゃんッ!」


星を見ながらのお風呂に思いを馳せていると、なんだか血相を変えた悟飯が戻ってきた。
なんだなんだ、一体どうし…って、


「え、エマのお姉さん…!?」

「家のすぐ近くで倒れてたんだ。血も出てる…早く手当しないと!」

「わかった、任せて。悟飯はエマのお姉さんをソファーに運んで!私は救急箱取ってくるから!」

「うん!」

「ま…ま、って……」

「え?」

「待、て……くだ、さ…い…」


掠れた声に駆け出そうとしていた足が思わず止まる。エマのお姉さんは薄らと焦点の合っていない目を開いて、けれどしっかい私の方を向いていた。


「シュエ、さ…お願い、が…あ、ります…」

「ちょ、喋っちゃダメだよ!傷が深いのに…!」

「ひめさまを…た、すけて…」

「…姫様?」

「わ、たし、は…姫さ、ま…いえ、エマの、姉ではありませ…ん…」

「…どういうこと?」

「エマさんのお姉さんじゃないなら、あなたは一体…」

「私、は…幼少よりエマ様に、仕えていた…侍女…ロゼ…。エマ姫は、リプカの国の、王女、です…」


エマが、お姫様?話が一気に壮大になりすぎて脳内処理が追いつかないんだけど。
エマのお姉さん…基ロゼさんはとぎれとぎれになりながらも、経由を語ってくれた。


昔々、リプカと言う国があったそうだ。
リプカの国には数多くの錬金術師がいて、そのおかげで国が発展し、栄えたそう。その中でも万象を読み解く黙示録を完成させることがリプカの錬金術師…もっと言うと、皇族たちの最終目的だったらさい。
けれどある日、王様は気付いてしまった。本当の万物を読み解くには世界を分解しなければいけないことを。
国の発展のためと研究してきた王様だったけれど、たった一国のために世界を壊すわけにはいかないと研究自体を凍結させることを選んだ。
正直今の技術だけでも十分に存続できるほどの国だったが、王様の家臣…レブルがそれを良しとしなかった。
レブルは王様たちを殺し黙示録を奪い、世界を分解せしめる装置…緑の獅子を起動させた。けれどそれにはストッパーが掛けられていて、無理に起動させたレブルは世界ではなくリプカの国を半分消し去ってしまった。


「王は、誰にも装置が使えないよう…動力源を別のものに移行させていたの…。それが、姫様が持つプラネットスケール…」

「プラネットスケール?」

「星詠みの楽譜…。星を束ねる空の歌…。かつてのリプカの皇族の中で、姫様だけが持っていた特別な力。4つの元素を音に見立て、組み立てるの…。そうすれば、緑の獅子の動力源の代わりに十分なり得る。レブルはそれを突き止め、ずっと姫様を、探していたようなの…。夕方に、姫様が攫われた…!」

「…そのレブルって人は、エマを使って世界を壊そうとしている。そういう事だよね」

「えぇ…」


だったら、私がするべきことはただ1つ。


「悟飯、ここでロゼさんのこと見てて」

「お姉ちゃん、まさか…」

「…エマを取り返しにいく」

「だ、ダメだよ1人でなんて!今回は今までのフリーザやセルみたいな相手じゃないんだ、そんなの…」

「親友が道具扱いされて、黙ってられるかよ!」

「、…お姉ちゃん…」

「私さ、リプカとか星詠みの歌とか、正直どうでもいい。ただ、エマと約束したんだよ。お泊まり会しようねって」

「シュエさん…」

「ねぇ、ロゼさん。エマがいる場所わかる?いる場所じゃなくて、いそうな場所とかでもいいの。そうしたら、私がエマの気を辿って…」

「…いえ、場所ならわかります」

「ほんと!?」

「旧リプカ国。世界を破壊せしめる装置は王宮の展望台にあります」

「なんでそんな目立つところに…」

「もともと、星を観測する機械だったんです。ある条件を揃えるためにわざわざそこに設置しました」

「エマを動力源にするだけじゃダメなの?」

「世界を分解するには相当のエネルギーが必要です。なので、惑星がある一定の動きをした時に効率よくエネルギーを蓄える必要があります。それが、惑星直列」


そういえばお昼のニュースでそんなことをちらっと聞いたような気がする。へぇ、今日がその惑星が一直線になる日かぁ………って、え!?

そそそ、それは世紀の大現象じゃないの!?だってだって惑星直列なんて何千兆年に1度とか言うふざけた周期の類まれなる天体現象だよね!?ね!?それが!!今日!?


「レブルは惑星が直列した際に生じるエネルギーを集めて、姫様のプラネットスケールで調律し、世界を分解する気です。…私ではそれを止めることも、姫様を救うこともできません…!シュエさん、我が国の問題を押し付けてしまい、申し訳ありません、ですが!どうか姫を、助けてください…!!」

「…ロゼさん、ロゼさん顔上げて?」

「、…」

「さっきも言ったけど、私はエマの力のこととかわかしどうでもいいんだ。親友が助けを求めているのなら、私の手がまだエマに届くのなら、助けない理由はないよ」

「ッ…ありがとう、ございます…!」


さぁて、始めようか。親友奪還作戦ってやつをさ!






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