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長い間の時間




「…そう、なら仕方ないわね」

『ごめんねエマぁ…!お父さんたちが帰ってきたら改めてお泊り会しようねぇえ…!!』

「はいはい、わかったから泣かないの。みっともない」

『辛辣ッ…!』

「嘘よ。じゃあ3日後、今日言った場所で待ち合わせでいいのね?」

『うん!迎えに行くから待っててね!今から楽しみだなぁ』

「そう。…私も、楽しみにしてるからね」

『え!ちょ、エマ今なんて!?ほんt』


ぶち。シュエが舞い上がって面倒くさくなる前に受話器を置いた。あの子ってば頭いいはずなのにおバカさんだから、思わずこういう辛辣な態度をとってしまう。けれど、シュエはシュエでこれが私の照れ隠しだってちゃんとわかってくれてるから、ついつい彼女に甘えてしまうのよね。
はぁ、と小さくため息を吐きながら明日のために準備した荷物を横目で見る。


「延期、かぁ…」


柄にもなく楽しみにしてたんだけど、親が留守になるのなら仕方ないわね。


「仕方ありませんよ。ご両親がいない家に上がり込むわけにはいきませんから」

「わかってるわよ」


ロゼの言うことはちゃんと理解している。けれど残念なものは残念なのだ。たった3日、されど3日。先に楽しみがあればあるほど、間の時間というのはとてつもなく長く感じるのだ。


「ねぇロゼ」

「はい」

「私、ここに来て初めての友達があの子でよかったって、すごく思うの。シュエは頭が良くて誰に対しても気さくで、けれどそれを絶対にひけらかしたりしないの。すごく友達想いだし、ほしい言葉をほしいときにくれるのよ。…でもきっと、あの子にそんなつもりはないんでしょうけどね」

「姫様…」

「なぁに?そんな顔して」

「いえ…ただ、姫様は良き友人と巡り合いになられたのだと感涙したのです」

「ふふ、大袈裟よ」


目頭を押さえるロゼを横目に窓の外を見上げる。いつもなら忌々しく思う月も、今だけは神々しい輝きに見えて柄にもなく胸が躍った夜だった。






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