ご
「シュエ」
ブルマさんへ渡すよう頼まれたファイルたちを抱えて歩いていると、ふと背後から声をかけられた。
「げ、ベジットさん…」
「げ、とはなんだ」
うお、つい条件反射で出ちった…。めんごめんご。
「…何か私にご用ですか」
「そう身構えんなって」
いや身構えるから。あんた今までの私に対する言動振り返ってみなよ。
なんて、全力で叫びたいけど今の私は得意気なのだ。なぜならベジットさんはナオさんにほの字であるからして、以前の様なセクハラ紛いを今後するとは限らない!
心の余裕って大事。
「大したことじゃないんだ。ただ…」
「!!!」
びゅんッ!咄嗟に顔をずらせば、頬にベジットさんの拳が掠めた。そのまま後ろに下がろうと体を捻らせたら脇腹に気弾があたり、壁を突き破って外に飛び出した。
「がはッ…!」
詰まった息を吐き出せば、少量の血が混じっていた。未だ何が起こったか理解できない頭をどうにか回転させていると、追撃とばかりにベジットさんが殴りかかってきた。
ちょちょちょ、ちょい…!ちょい待てぇえええ!!!
「な、何!?なんなのいきなりけしかけてきて!!抜き打ち修行ですか!?」
「まだわからねぇか?」
「ッ!」
ばちん!顔面に飛んできた拳を両手でどうにか防ぐ。
なんだってこんなこと…!わけわからんわ!
「お前さ、ナオの事でなんか心当たりあるだろ」
「え、ナオさん?いや別に…」
「とぼけんなよ。あいつがお前から嫌がらせされてるって、泣きながら言ってきたんだ」
「は?」
こいつは一体何を言っているんだろうか。私がナオさんに嫌がらせ?いや、いやいやいや。万が一にでもないから。てか、嫌がらせする理由なんてないし。
白けた目でベジットさんを見上げると、それが気に食わなかったのかなんなのか私が押さえ込んでいる反対の拳を突き出してきた。
それをほぼ反射で避ける。
「がッ!」
が、避けたと思ったらそれはフェイントだったらしい。脇腹にダイレクトにぶち当たった蹴りに私の体はいとも簡単に吹き飛ばされ、庭の池に落ちた。
「ぷぁッ…!ごほッ、ごほッ…!」
「可哀想に、上手く呼吸もできないのか」
「うぁ…!」
前髪を鷲掴みにされて、池の中から引き摺り出される。ぶちぶちと不穏な音が頭部から聞こえてちょっとぎくッとした。
これで前髪が禿げたらこいつをどうしてくれようか。
「痛いか?痛いよな。ナオもそんな気持ちだったんだぜ?」
「だ、だから…!さっきから何を言って…!」
「…この期に及んでまだとぼけんのか。相手がシュエだからこれ以上は手を挙げたくなかったのに、これじゃあ仕方ない」
すッ、とベジットさんの腕が持ち上げられる。その手の中に青い閃光が弾けて、集まって、何が何だか未だにわからない私はただそれを呆然と見ていた。
「ベジットさッ……」
「消えろ」
一際大きく弾けた光に思わず目を閉じた。
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