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さん






「大王様ぁ、書類持ってきたよ!」

「おぉ、わざわざすまんな。重かっただろう?」

「ううん、全然!私、これでもサイヤ人だし、お父さん程じゃないけど力持ちなんだよ」

「そうかそうか。よし、ご褒美に饅頭をやろう。地獄一うまい饅頭だぞ」

「うわぁーい、ありがとう!」


まるで親戚のおじさんとちびっ子のようなやり取りをした私。
やった、おやつゲットだぜ。もっちりふわふわな饅頭に涎が垂れそう。


「そうだ、ここに来たついでに2、3ほど頼まれてほしいんだが…」

「え、何?」

「シュエは界王様のことを知っているか?」

「かいおー…」


聞いたことのあるようなないようなっていうふわっとした感じ。

眉を下げて大王様を見上げたら、わたわたとしながら逆に困った顔をさせてしまった。
なんか、申し訳ない…


「いや、いい。界王様の名を聞いた事があるのかどうか知りたかっただけなんだ。その様子じゃ、聞いた事なさそうだな」

「すみません…」

「謝るでない!…まぁ、シュエが知らずともあっちはお前さんのことをきっと知っているだろうよ。…そこでだ」

「?」

「今回特別に、外出許可をやる。そんでもって界王様にこの荷物を届けてくれんか?」





通行許可証を門番の鬼に見せ、長い蛇のような道をひた歩く。歩く。歩く………


「…終わりはあるんだろうか」


唐突に湧き上がった疑問である。いやだって、道が終わる気配がないもん。見渡せども雲、雲、道、雲。

正直、飽きるよねって言う。


「てか、今更だけど馬鹿正直に歩くより舞空術でショートカットした方が早いんじゃなかろうか」


うわぁい、シュエたんってばうっかり〜。
大王様から預かった大切な荷物を抱え直し、びゅーん!っと蛇の道に沿って飛ぶ。
そうしたらあっという間に尻尾に辿り着き、ぽつりと浮かぶ小さな球体が見えてきた。
なんだ、あの家と道しかない極小惑星は。コミカルにもほどがあるぜ。


「…なんか、めっちゃ引き寄せられてない?」


あの球体に近付くにつれ、徐々に体が引き寄せられているような気がしてならない。てゆーかこれ…


「磁石…!?うわ、わわわ…!わー!!」


どしーん!無様にも墜落した私ではあるけれど、ここで事件です。
なんか、体が落ちた体制のままぴくりとも動かないんだけど。

えッ、え…!?え!?ゑ!?(混乱)。
どういうことだってばよ……………はッ!?も、もしかしてここって超強力な瞬間接着剤が塗られてあるとか…!?

じゃあ私…一生このまま…!?


「すごい音が聞こえたと思ったら、なんじゃあお前さんは」

「へ?」


なんか家から猿のようなゴリラのような茶色のもふもふとぬいぐるみサイズの虫となんだか顔色がよろしくないおじさん?が出てきて、地面に這い蹲る私を訝しげに見てきた。

ちょっと!見世物じゃないんだけど!!


「あの…」

「…ん?よく見たらお前さん、悟空の娘じゃないか」

「え?」

「そうかそうか、お前さんがなぁ…。名前は?」

「あ、えと、シュエです」

「シュエか。いい名前じゃな。どれ、立てるか?」


ここは地球の10倍の重力があるからなぁ。
とんでもない爆弾を投下したおじさんは朗らかに笑いながら、這い蹲る私をどうにか立たせてくれた。

10倍の重力とか…どうりで引き寄せられるわけだよ。


「あの、界王様って…」

「ワシの事じゃよ!」


えっへん。なんか胸張ってるこの胡散臭いおじさんが界王様らしい。


「こっちがバブルスくんとグレゴリーじゃ」

「ウホホ」

「どうも〜」

「む、虫と猿ゴリラが喋った…!」


衝撃的事実…!震えるわ。


「で、お前さんは何しにここに来たんじゃ?」

「あ、そうだ。あの、私大王様から界王様にこれを届けるよう頼まれてここまで来ました」

「閻魔大王からワシに…?あ、あー!思い出した!わざわざありがとう!」


やけにルンルンだなぁ。そんなにあの荷物が届いたのが嬉しかったのかな。何が入ってんだろ。
ぼけーッと足取り軽く家へと向かう界王様を眺めていると、唐突にぐりん、と振り返って来た。うお。


「シュエも食べるか?」

「へ?」






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