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よん






一口を口に入れるまでが果てしなく長い。それもきっと妖怪のせいなのね…そうなのね…

なんて、言ってる場合ではない。なんせ重いのだ。体が。


「やっぱ地獄饅頭は最高じゃなぁ。甘さ控えめの粒あんがたまらんわい」

「こしあんも中々ですよ!」

「ウホ!」

「う…」

「なんじゃいシュエ、お前さんぜんぜん食べとらんじゃないか。饅頭は嫌いか?」

「いや、むしろ好物なんですけど…私としては重力がきつすぎて座ってるのもやっとって言うか…」

「…あぁ、なるほど。地球人には馴染みがないからなぁ。悟空もそんなこと言っとったわい」

「…それなんですけど、界王様はどうして私がお父さんの娘だってわかったんですか?」


囁かな疑問だった。見た目は私お父さん似じゃないから。
そう言うと界王様は目元を柔らかく(したような気がした)して笑った。


「悟空がここに修行しに来た時にな、しきりにお前さんのことを話しとったぞ」

「え…」

「しっかり者の自慢の娘だって」


まぁワシからしてみれば、まだまだ小さい子供じゃがな!
茶化してくる界王様の言葉が耳に入らないくらい胸がドキドキと高鳴る。

そっか…

そうなんだ…


「私…自慢の娘でいいんだ…」


緩みまくる頬をそのままに手元の饅頭に目線を落とした。私今、すっごく嬉しい。
自分が、あの人たちの家族でいいんだって認められたみたいで、すごく、すごく…


「嬉しい…」


界王様は今度は茶化さないで、ぽんぽんと私の頭をなでた。





「悟空たちの様子を見てみるか?」


不意に界王様がそんな事を聞いてきた。私がナメック星で死んでしばらく。寂しいだとか、皆元気にしているだろうかとか、色々思う事はあるけど…


「ううん、いいや」

「なぜじゃ?お前さんは確かに死人じゃが、ちらっと様子を見ることくらい閻魔だって…」

「見ちゃうと、会いたくなっちゃう。けど、私はもう死んでるし、死んだ人間って本当は、生きてる人間に干渉しちゃダメなんだよ」

「…シュエがそう言うなら、ワシはなんも言わんよ」

「うん。…ありがとうございます、界王様」


ドラゴンボールで生き返れない私は、ここで皆を見守ることしかできない。もし一目でも皆の姿を見てしまったら、きっと寂しくなってしまう。未練がないかと言えば嘘。未練だらけ。お母さん無理してないかなとか、お父さんは修行ばかりしてないかなとか、クリリンさんが早く結婚できますようにとか。…悟飯の成長を見ていたかったとか。

けど、死んでしまった今、私に残されたのはただ“見ているだけ”という事。


「(大好きな皆が、どうか幸せでありますように)」


歯痒さを噛み締めながら、心底祈った。






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