×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -



よん






「ひゃー、辺り一面氷だらけだ…」

「さすが、氷の大陸と言われるだけあるわねぇ」


ブルマさんが操縦する飛行機から見下ろした地上は真っ白であった。これ、外に出た瞬間凍えるやつじゃなかろうか。

寒暖差に人知れず身震いをしていると、なにか見つけたらしいブルマさんが声を上げた。


「あそこ!フリーザ軍がいるわ!」

「チッ…あいつら、もう最後の1個を見つけやがったか」

「なら、奪い返せばいいだけの話だよ。もともと集めてたのはこっちなんだから」

「…あんた、時々孫くん化するわよね」


失礼な。一体いつどのタイミングで私がお父さん化したというの。ちらッと振り返ったお父さんはなんか照れ笑いしていた。

いや、なんで?


「そろそろ着陸するわよ!」


手頃な場所に掴まり、飛行機がゆっくりと下降していくのを窓から眺める。がこん、と機体が地面に着くと同時にハッチが開き、外の冷気が一気に機内に流れ込んできた。


「うっひゃー!こりゃ寒ぃ!」

「ウイスさんはよく平気ね」

「宇宙空間はもっと寒いですからね」

「…私、もうちょっと分厚いのでもよかったかも…」


絶賛後悔の真っ只中である。


「うりゃ!」

「ぎゃー!!つめたッ!!お父さん!?何するの!?」

「へへへッ!」

「くッ……くらえ!」

「おわッ!やったなー?」


ばっさばっさと大量の雪を投げつけてくるお父さんが厄介すぎてやばい。負けじと投げ返すものの、お父さんの方が投げるスパンが短すぎて私の攻撃が掻き消されてるんだけど。

……って。


「ちょ、ちょっとタンマ!!」

「なんだよシュエー、もうへばったのけ?」

「違う違うあれ!逃げてる逃げてる!」

「ほ?」

「チッ…」


私たち(主にお父さん)が雪遊びしているのをいい事に、いけしゃーしゃーと逃げ出そうとしたフリーザ軍だけど、ベジータさんの容赦ない追撃が見事命中して氷山に墜落して行った。

すかさず舞空術で飛んでいくお父さんとベジータさんの後にちゃっかり着いて行った私。
ベジータさんはフリーザ軍の小型宇宙船を片手で持ち上げ、お父さんはフロントガラスにへばりついて中にいるフリーザ軍にふんすふんすと威嚇してた。


「おいおめーら!出てきてドラゴンボールを返せ!」

「……お父さん、そんなんじゃ怖がって返してくれないよ」


見てみなよ、可哀想なくらい震えてんじゃん。同情するわ。


「ッ!」


不意に覚えのある気を感じたと思ったら空が赤く瞬き、次の瞬間には空を覆っていた厚い雪雲が吹き飛ばされていた。
お父さんやベジータさんと共に宇宙船をほっぽって数メートル離れる。


「やれやれ、フリーザの登場だ」

「…待って、フリーザだけじゃないよ。今までに感じたことのないほどとんでもない気…」

「…どうやらフリーザだけじゃないらしいな」


険しい顔で降りてくるフリーザの宇宙船を睨みつける。この押し寄せるようなプレッシャー。まいったな…腰が砕けそうだ。

ついに地上へ降り立った宇宙船。ゆっくりとハッチが開かれ、中からフリーザの部下と思わしき何人かが先立つ。その後に、見覚えのありすぎる不気味な笑みを称えたフリーザと、その後ろに控える見覚えのない2人が降りてきた。

そのうちの1人…頬に傷のある青年の視線が私たちに向けられた瞬間、とんでもないほどのプレッシャーが押し寄せてきた。


「わッ…」


吹き荒れる風に腕で顔を覆う。すると、ベジータさんが何かに気がついたらしい。


「あいつら、サイヤ人じゃないか?」

「え、サイヤ人?」


改めて2人をまじまじと見つめる。なるほど、言われてみればサイヤ人だわ。なんて言うか、こう…同族だからこそ感じるあれ的ななにか。ふわっとしすぎてわからんけど何となくそんな感じ。

お父さんは鋭い声でフリーザに言い放った。


「何しに来たんだ、フリーザ!」

「もうご存知なんでしょう?ドラゴンボールで願いを叶えるためですよ」

「…その2人は?」

「こちらは新しくフリーザ軍に加わったブロリーさんと、そのお父様の…」

「パラガスだ」

「…だそうです。お気付きのように、あなたたちと同じサイヤ人ですよ」


フリーザの隣に並ぶようにして立つ髭の人がパラガスさんで、あっちの青年がブロリーさんか…。なぁーる。
ちらッと横目でベジータさんを見上げると、私の視線の意図に気付いたらしい彼は眉間に皺を寄せた。


「…そんなやつは知らん」

「このブロリーさんとパラガスさんは、あなたの父親であるベジータ王からひどい仕打ちを受けて、今まで見知らぬ過酷な星から脱出できずにいたそうですよ」

「ちょっと、やっぱりベジータさんと因縁のあるやつじゃん。何となくそんな気はしてたけどマジかよ」

「おい、黙れ小娘」


足でふくらはぎを小突かれた。


「フリーザ」


唐突に真剣な顔をしたお父さんが口を開いた。


「カコクってなんだ?」


……いや、いやいやいや。お父さんそれは…今のこの空気で言うことじゃないよ。見てみなよあのフリーザの顔。あんな呆けた顔したフリーザ初めて見たわ。


「……厳しすぎるってことですよ」


そして意味を教えてあげてる!!
「この馬鹿め…」私もう帰ってもいいかな。


「くッ…お前だけは絶対に許さんぞ、ベジータ!」

「…」

「俺たちはその復讐に来たんだ!」

「ふざけるな、俺の知ったことか!」

「そうだよ!ベジータ王にならともかく、なんでベジータさんに矛先変えるわけ!?関係ないじゃん!」

「同じサイヤ人同士なんだから、仲良くやろうぜ」


なんて、言ってはみるものの奴さんにそんなつもりは微塵もなさそうだと思った。
あのブロリーさんとかいう人、さっきから顔が怖すぎてちびりそうなんだけど。睨みつけてくるっていうか、もはや視線で宣戦布告してる感じ…?あーやだやだ。平和的解決がしたかったんだけどなぁ…


「……お父さん」

「あぁ、わかってる。シュエはブルマんとこに行ってろ」

「うん」


唸るブロリーさんから目を離さないままブルマさんとウイスさんがいるところまで飛ぶ。


「シュエちゃん、ドラゴンボールは無理そう?」

「無理っていうか、それどころじゃないっていうか…」

「はぁぁ…結局いつものパターンね…」

「お2人共、お喋りはそこまでにして、もう少し下がった方がいいですよ」

「え?」


ウイスさんがそういうのと同時に、パラガスさんからGOサインが出たらしいブロリーさんがベジータさんめがけて突っ込んで行った。途端に始まる目にも止まらない猛攻が地上の氷を抉っていく。
戦うことをやめても、お父さんに無理くり扱かれていたおかげでどうにか彼らのスピードに目がついていけてる。


「強いな、ブロリーさん」


初めの方こそ荒削りで対人に不慣れな感じの攻撃だったけれど、少し時間が経てばベジータさんのスピードに慣れるだけじゃなく、戦い方も学習していってるようだった。
ベジータさんはブロリーさんの拳を握り込み、勢いよく蹴り飛ばした瞬間超サイヤ人へと姿を変える。

この短時間であのベジータさんを超サイヤ人にさせるなんて、なんて人なんだろう。

ベジータさんが超サイヤ人になった事でさらに激しさを増した戦いに、私は瞬きもできずに見ていた。






prev next