いち
「だだだッ!!でやぁああー!!!」
「はぁぁああ!!!」
どっかんどっかんと、もはや何時間が経っているのか数えるのすら億劫になってきた頃。私はパフェを頬張るウイスさんの隣で白けた目を音の根源に向けた。
というのも、ここはブルマさんがわざわざお父さんとベジータさんのため“だけ”に作ってくれた街から何キロも離れた場所にある孤島(別荘)である。
宇宙で出会った強者たちに物見事感化されたお父さんは強さを求め、ひたすら修行、修行、修行。
そもそも、お父さんやベジータさんほどの力を持ってして近くに街がある大陸で穏やかに修行なんてできるわけもなく。そんな配慮からブルマさんはお父さんとベジータさん用の修行スペースを用意してくれたのだった。ちゃんちゃん。
「おぉーい、シュエー!何やってんだ、お前も来いよ!」
ずこッ。投げかけられたお父さんの言葉にフルーツジュースが器官に入った。
「ごほッ、ごほッ……!い、行かないよ!私が混じったら瞬く間に死ぬから!何言ってんの!?」
「でーじょうぶだって!前だって手合わせして、生きてたじゃねーか!」
「鬼かよ」
我が父ながら物騒だ。ぶんぶんと子供みたいに手を振るお父さんを半目で睨めつけていると、待ちぼうけを食らっていたらしいベジータさんが額に青筋を立てながらお父さんの頭を叩いた。
やべーな。
「おい、カカロット!いつまで油を売ってるつもりだ、さっさとしろ!!」
「けどよぉ、シュエがずっとジュースばっか飲んでっから…」
「やりたくないやつが無理矢理参加しても迷惑だ!」
「ちぇー」
そうして再び手合わせを再開したらしい2人。私は露骨にため息をはいた。
「何だかんだ、ベジータさんはシュエさんには甘いですねぇ」
ウイスさんの方を向くと、パフェの最下層にあるクリームとフレークをつついていた。彼の向こうにいるビルス様は我関せずだが、眉間に皺を寄せている当たりうるさくて仕方がないのだろう。
私はウイスさんに苦笑いした。
「やっぱりわかっちゃう?」
「おや、そんなことを仰るという事はシュエさんは確信犯ですね」
「人聞きの悪い…。違いますぅ、ベジータさんがわかりやすいだけですぅー」
ベジータさんは昔からそうだ。キツくて辛辣で素っ気ないけど、他の人より私にだけほんのちょっと、優しかった。
優しいっていうか、不器用に甘やかしてくれる?というより、今みたいにさり気なく、本当に遠回しに無理にお父さんに付き合う必要はないと言ってくれたのだ。長年の付き合いでそのへんは何となくわかるようになったよ!
そんなベジータさんのツンデレ気質をウイスさんは見抜いたようだった。決して「くそ面白い事実を見つけたぜ」みたいななんとも言えない笑みを浮かべるウイスさんなんて私は見ていない。
「だぁああああああ!!!うるさぁぁあああああい!!!もっと静かに戦えんのか!?」
そうしてとうとうお父さんとベジータさんの騒音にビルス様がブチ切れたのだった。
あーあ。
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