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よん






「ねぇ待ってぇえ…!ま"っ"て"よ"ぉ"お"お"…!!」


ずーるずーる。私の腰にしがみ付いたまま離れずに引き摺られているこの少年…名前を我妻善逸くんと言うらしいんだけど、なんせめっちゃやかましい。彼の声に引かれて鬼が集まってきていると言っても過言ではないくらいにやかましいのだ。


「お願い置いて行かないで!俺を守って!じゃないと死んじゃう!」

「…いや、あのね、善逸くん。一応私女なんだよ…?女に守ってって言うのはちょっと…普通逆じゃない?」

「だって俺めちゃくちゃ弱いもんッ!!秒だよ!?秒で死ぬよ!?もし俺が死んだら君の枕元に化けて出るからね!?」

「えぇー…」


なんか、すごく理不尽なことを言われて仕方がない。
臆病でビビりで根性なし(あ…意味同じか…)な彼は、先ほどの謎の求婚を当然ながら断ってからこんな感じだ。俺を守ってくれだの、離れたら化けて出るだの。


「(あ、頭が痛いぞ…)」

「シュエちゃぁん…お願いだよぅ、見捨てないでぇえ…!」

「はぁ…」


ここまで泣き付かれたら、逆にかわいそうになってくるんだけどどうしよう。どうしたらいい?足蹴にしてでも剥がして置いていくべき?それとも七日目まで面倒みる?

…どっちも、嫌だなぁ…心が痛む…


「…あのさ、善逸くん」

「わーん、わーんッ!!……うぇッ」

「吐くなよ!?」

「吐かな"い"…!」

「お、おう…。あーもぅ、わかったよぅ…一緒にいてあげるよぅ…」

「本当!?結婚もしてくれる!?」

「結婚はしない」


なんでだよ。なんでそうなるんだよ。
さっきと打って変わってきらきらりんりんと目を輝かせる善逸くんが…悟飯にだな…被って仕方がないんだよ…


「その代わり!」

「結婚!?」

「ちゃうわ!」


ぽすん。金髪頭に片手を乗せた。おぉ…思いのほかふわふわのサラサラだ…

善逸くんの髪の手触りに感動しつつも左右に手を揺らす。善逸くんと言えば、自分が何をされたかわかった瞬間にぶわわッと顔を茹でダコみたいに真っ赤にさせた。

あ、かわいい。


「頭なでなでで許してくれる?」

「………ひゃぃ…」

「ん。じゃあ、行こっか」


両手で彼の手を引っ張って立ち上がらせ、そのまま片手は繋いだままスタスタと木々の間をすり抜ける。
善逸くんはびっくりするくらい静かなままだった。


「(小さい頃の悟飯を見ているようで、ほっとけないんだよなぁ…)」


泣き虫で甘えたな小さい悟飯を思い出す。ほんと、昔に戻ったみたいでなんだか泣きそうだ。

ほろり、目尻から落ちそうになる前に繋いだ手にほんの少しだけ力を込めた。






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