×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

世界が変わった



「うーん…」


かれこれ数時間はこうして沼に釣り針を垂らしているけど、一向に揺れる気配がない。たとえ揺れたとしても、それはごく小さな魚であったり、オレが求めている沼の主はちっとも掠りはしない。沼の主の名前もだけじゃないらしい。

それにしても困ったなぁ…主が釣れないと、オレはハンター試験に受けることができない。親父を探すためにハンターになる。そして、ミトさんと約束した条件は、この沼の主を釣り上げること。焦ったって仕方ないのはわかっているけれど、こうも釣れなかったら多少なりとも焦燥感というものが出てくるわけで。

…もうしばらく粘ってみよう。

エサの確認をしようといったん竿を引き上げたときだった。


「うわッ!…な、何?」


不意にオレの後ろからたくさんの鳥たちが翔け抜けて行った。さっきまで静かだったのにいきなりどうしたんだろう…
ふと何の気なしに空を見上げてみて、びっくりした。このくじら島を覆い尽くせそうなほど大きな八芒星が空一面に浮かび上がっていて、さきほどオレの横を飛んで行った鳥たちはそこに向かっていったみたいだ。けれどオレが瞬きをした瞬間にそれは空気中に霧散され、代わりに八芒星があった場所から何かがキラキラと落ちてきた。ぐっと目を凝らして見てみると、それは人の形をしていた。てゆーか紛れもなく人である。

「え、ひ、人!?ちょ、助けないと…!」


思わず釣り竿を放り出して森を駆ける。あんな高さから落ちたら誰であっても死んでしまう…!大体の落下点を予測してさらにスピードを上げる。そして辿りついた先は森の奥詰まった場所だった。少し開けたようになっているそこにふわふわと降って来たのはどうやら女の子のようだ。
気絶しているのか、目は固く閉じられていて、そして何より目を引いたのが、彼女の周りを忙しなく飛ぶ小さな白い鳥たちだった。
ピィピィと鳴くそれらに導かれるように女の子に歩み寄る。そしてそっと彼女の膝裏と背中に手を添えると、ゆっくりと両腕に重力がかかった。思っていたよりずっと軽くて驚いたけど、彼女をしっかりと抱き留めたと同時に周りを飛んでいた白い鳥たちは弾けるように消えてしまった。


「……なんだったんだろ…」

「う…」


しばらく呆然としていると、腕の中の少女の声にハッと現実に引き戻された。さっきの鳥といいこの子といい、気になることはたくさんあるけれど、今はこの子を何とかしないと。
よいしょっと女の子を抱え直し、家に戻るべく地を蹴った。





-----


ラ〇ュタだ!!
親方ぁー!空から女の子が…!!

なんつって。

 
(4|23)