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パララックスビュー



大まかに私について神様に話した私は、神様からの返答を固唾を飲んで待っていた。眉間に皺を寄せて唸っていた神様は難しそうに息を吐く。


「失った前世の記憶を知りたいとな…」

「この世界に生を受けた理由もわからないし、何より死んだ覚えもないのにこうやって生まれ変わっているのってなんか釈然としないって言うか…うまく言えませんけど」

「いい、何となくわかる。そうじゃなぁ…思ってたより難しいぞ、これは」

「私、知りたいんです。本当の自分が何者か」

「…もし、もしじゃ。お前がそれを知ったとして、知らなければよかったと絶望する覚悟はあるか?」

「…どういう、」

「そのまんまの意味だ。お前さんにとってよくない結末を迎えているかもしれん。それでも、お前は知りたいのか」


あまりに真剣な神様の声に思わずたじろいだ。ぜ、絶望って…私の人生ってそんなに壮絶だったかなぁ。今となっては覚えていないけど…うん、やっぱり知りたいよ。結果がどうであれ、私は私がここにいる意味が知りたい。


「そうか…」


椅子から立ち上がった神様は部屋のドアを開けると、私を振り返って手招きをした。導かれるまま神様について行く。そして今まで通って来た部屋のどこよりも空気の違う部屋の前で立ち止まるとそっとドアに手を置いた。


「ここは夢幻層と言って、魂の思いを映し出す場所だ。地獄と繋がっているから、生身の人間が入れば魂の未練に飲み込まれるかもしれん。しかもこの中とこちらでは時間の流れが違う。恐らくお前の知りたいことはここで知れるだろう」

「夢幻層…」

「…どうする。行くか、それとも引き返すか。正直ワシはあまりおすすめはせん。ここはとても危険なんじゃ。本音を言うとお前には、このまま何も知らずに悟空たち家族と暮らしてほしいのじゃが…」

「行くよ。私は心から知りたい。だから…」


ドアノブに手をかける。この奥に私の前世がある。行かなくちゃ。知らなくちゃ。意地でもなんでもない私の本音。このままの状態で悟飯たちと生きたくはない。いつかちゃんとこのことも話そうと思っている。だから、まずは私が私自身について知らないと。

だって、今まで私が過ごしてきた時間は幻でもなんでもないんだから。


「お父さんに、しばらく帰らないって伝えてくれませんか?」

「…いいだろう。気を付けてな」

「はい!」


開け放った扉の先に広がる深淵に私は飛び込んだ。






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