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世迷い言



「い、今…何が起こったの…?」


超サイヤ人と思わしき青年があっという間にフリーザと、フリーザによく似た大きなフリーザ(ややこしい…)を倒す姿に圧倒された。わ、私たちが死にそうになったやつらをいとも簡単にバラすなんて…
…まぁ、彼が何者かわからないけれど、地球が助かったのには変わりない。


「これから孫悟空さんを迎えに行きます!一緒に行きませんか?」

「…はい?」


ぽかん、と彼を見ていると唐突に告げられた内容に全員口をあんぐりと開けた。む、迎えに行くってどゆこと…それよりなんでお父さんを知っているのか。うーん、謎が謎を呼ぶなぁ…


「とにかく行ってみません?」

「い、行ってみませんってシュエ…」

「素性は知れないけど、行ってみるに越したことはないと思う。…私はあの人について行くよ」

「ぼ、ぼくも行きます」

「…得体が知れないにしろ、地球を救ってくれたことには変わりない。俺は行く」

「…ふん、正体を暴いてやる」

「え!?ちょ、みんな行くの!?」


戸惑うクリリンさんを放置して全員でさっきの青年を追いかける。どっちにしろ詳細はあの人から聞き出すしかないのだから。


「…お姉ちゃんは、あの人のことどう思う?」


隣に並んだ悟飯が問いかけてきた。うーん、今の時点では何とも言えないなぁ。不審だけど、敵ではないってところだろうか。今は曖昧なことしか言えないけど、もし本当にお父さんが地球に帰ってくるのならその時に聞けばいいし。


「楽観的だなぁ」

「難しく考えても仕方ないでしょ?人生楽しんだもの勝ちだよ。こういう意味不明な時だって謎解きしてるみたいに推理した方が面白いと思わない?」

「ぼくは思わないかな…」

「えー…あ、あの人降りるみたいだよ」


降り立った彼に続いて地上に足を付ける。ふと彼が懐からホイポイカプセルを放り投げて何かを取り出した。あれは、小型冷蔵庫みたいなあれだろうか…
なにあれ超ハイテク。


「孫悟空さんが来るまでまだ3時間あります。飲み物もたくさんあるので、よかったらどうぞ」

「え、いいの?やった私もーらい!」

「だからお前は物につられるなとあれほど…!」

「あら、私もいただくわよ?」

「ぼくもー!」

「ぶ、ブルマさん、悟飯!?」


てってけてー、と冷蔵庫まで駆け寄り中を覗き込むと、本当にたくさん飲み物があった。うっわぁ、どれにしようかな…


「迷うな…」

「ぼくこれがいいな」

「レモンソーダだなんて可愛いの選んだね悟飯」

「お姉ちゃんは決まった?」

「いんや?迷ってるんだよねぇ…」

「おねえ、ちゃん…?」


不意に愕然とした声が隣から聞こえた。振り返ると私をガン見しているあの青年が…
え、何、何なの。超絶怖いんだけどお兄さん…


「あの、何か…」

「えッ!?あ、いえ…なんでもないです…」


うーん、なんだかよくわからんがどうも腑に落ちなさそうだなぁ。まぁいっか。


「ねぇねぇお兄さん、お兄さんのおすすめってどれ?」

「お、おすすめ?あー、はい…俺はこれが好きですね」

「ブドウソーダ?お兄さん結構可愛いの好きなんだね」

「かッ!?」

「お、普通においしい!ありがとうお兄さん!」


地べたに腰かけて私に手を振る悟飯に駆け寄った。あの子本当何しても可愛いよね。心が癒されたよ。


「あ、お姉ちゃんそれにしたんだ!」

「うん。あのお兄さんのおすすめなんだって」

「…へぇ」


あれ、なんか一瞬悟飯が黒く見えたんだけど気のせいだよね。だってあの悟飯だよ?天使の笑みを零す悟飯があんな…ねぇ?


「ねぇねぇ、お姉ちゃんの一口ちょうだい?」

「ん?いいよー。ほれ」

「わーい!」


か、かわッ…!これが7歳の破壊力か…ショタの力か…侮れないな。


「わ、おいしい!」

「でしょでしょ?」

「お姉ちゃん、ぼくのもあげるよ!」

「いいの?やった!」


悟飯からジュースの缶を受け取り一口飲んだ。うーん、おいしいのはおいしいんだけど、ブドウソーダ飲んだ後にレモンだから若干後味悪い…


「どう?」

「うん、おいしいよ!」


なんてこと悟飯に言えるわけでもなく。この純粋な笑みを壊すほど私は肝が据わっているわけではないのだ。


それから何をするわけでもなく3時間が経った頃。こちらに迫ってくる大きな気を感じた。


「来た」

「ほ、本当だ!確かに何かが来る…!」

「お父さんだ!お父さんの気だ!」


懐かしいこの気をぼうっと辿っていると、少し離れた場所にベジータが以前乗っていた丸い宇宙船が落ちた。出来上がったクレーターの中をみんなして覗き込む。ゆっくりと開いたハッチから顔を出したのはまさしく私たちが焦がれていたお父さんで…


「お父さん…!」

「わ…!お父さんだ…!お帰りなさいお父さん!!」

「悟空ー!」


「お、おめぇらなんで…どうしてオラがここに着くことがわかったんだ?」

「この子よこの子!この子が孫くんがここに帰って来るって教えてくれたの!!」

「お父さんこの人知ってるんでしょ?」


ようやく青年について知ることができる。お父さんと知り合いなら、お父さんがここに来ることだって事前に聞いてて私たちに教えてくれたのかもしれないし。
けれどそれはお父さん自身の言葉によって簡単に打ち砕かれた。


「おめぇ誰だ?」

「「「…へ?」」」

「え、し、知り合いじゃないの?」

「いんや?オラ初めて会ったけど…フリーザたちはオラがここに来ることは知ってたみたいだけど…」


ど、どういうことだろう。頭がこんがらがって来たんだけど。青年はお父さんのことを知っている。けれどお父さんは知らない。それにさっきの超サイヤ人についても疑問だらけだ。ベジータ曰くサイヤ人はお父さんとベジータ、そしてサイヤ人と地球人の混血である私と悟飯の4人だけらしい。そしてサイヤ人はみんな黒髪なんだとか。
そう言えば、ラディッツもベジータも…ナッパはどうか知らないけど、お父さんも私も悟飯もみんな黒髪だよね。

うーん…なんだかなぁ…

1人でうんうん考えている間にお父さんは青年と向こうの方に行ってしまっようで。2人だけで話したいことがあるみたい。なんだろう、気になる。


「シュエ」

「はい?なんですかピッコロさん」

「ちょっと来い」


な、なんだろう私ピッコロさんにお呼び出しされるようなことしたかな…?悟飯と顔を見合わせていると早くしろと言わんばかりに睨み付けてくるんだから私そろそろ胃潰瘍になるんじゃないかと思ってる。なんだろう、最近睨まれてばっかりなんだけど。なんなの。ねぇ。


「…なんですか」

「なんでそう不貞腐れているんだ」

「自分の胸に手を当てて聞いてみてください」


毎回毎回睨まれてちゃ不貞腐れたくもなるよ。やってらんないね。


「お前は超サイヤ人になれるのか?」

「あれ、ピッコロさんって知ってたっけ?」

「さっき孫があいつに言っていた。で、どうなんだ」

「うーん、なれるっちゃなれるけど、最近ようやく自分でコントロールできるようになったところかな。油断すると飲み込まれそうにはなるけど、コツは掴んだから大丈夫」

「そうか…」

「…それがどうかしました?」

「いや、なんでもない」

「変なの」


わしわしと頭をなでてくるピッコロさんの手を振り払いながら首を傾げた。。今日一日でどんだけ頭なでられるんだろう私…


「シュエ、お前はお前だ。誰が何を言おうと今まで生きてきた時間を否定するな。誰にも流されるんじゃないぞ」

「え、なんですか急に。私ちょっといやだいぶ意味がわかんないんですけど」

「言葉のまんまだな」

「なにそれ意味深…」


今まで生きてきた時間って…なんでそんな大層なことになるんだろうか。激しく疑問だ…


「否定するなって言われても…」


そもそも私がここにいないことが当たり前なのに、これ以上どうすればいいんだ。お父さんとの再会を喜ぶみんなの後ろで私は人知れず親指の爪を噛んだ。

あぁ、頭が痛い。







少し話を飛ばしました。



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