午後の陽射し
私がこの世界に生まれて半年とちょっと。皆さんに朗報です。私、ハイハイができるようになりました。
「シュエちゃん、頑張るだ!ほら、おっかあんとこにおいで!」
「ぅあ、あー」
「あぁ、あんなところに小石が!悟空さ!見てるだけならどけてくんろ!」
「でぇじょーぶだって!心配しすぎなんだって、チチは」
「悟空さはのんびりしすぎなんだ!」
たはは!と頭をかくお父さんにもう!と膨れたお母さん。我が両親ながら可愛いすぎか。
でもまあ、こういう夫婦だからこそ上手くいくんだと思うなぁ。なんだかんだ、お母さんってばお父さんのとこ大好きなんだから。
「あぅ」
「お、シュエよく来たな!さっすがオラの子だ!!」
ふふん、そうでしょそうでしょ。私ってばすごいでしょ。もっと褒めてくれてもいいんだよ。私褒められると伸びるタイプだから。
お父さんに抱っこされなから得意げに胸を張って見せる。
「見事なハイハイだったべ!この調子なら、もう何ヶ月もしないうちに歩き出すんじゃねぇだか?」
「そんなもんか?」
「きっとそうだ!」
ほぉー。と感心したように見つめてくるお父さん。気持ち目がきらきらしてる気もしなくはないんだど。
「なぁチチ、オラこのままシュエと散歩してくるな!」
「まぁた悟空さはそったらこと言って。シュエちゃんはまだ小さいんだべ?あんま無理させたら…」
「夕飯までには帰ってくるって!でぇじょうぶだ、なんてったってオラたちの子なんだから」
「悟空さ…わかった。約束だべ?」
「おう!」
じゃ、行ってくる!とどこからともなくやってきた筋斗雲に飛び乗って、ふわりと空に舞い上がった。
「気をつけるだよー!」
「そういえば、こうやってシュエとどっか行くのって初めてだよなぁ」
「あー、」
き、筋斗雲…!!空飛ぶ雲だ!!は、初めて乗った…めちゃくちゃ感動する!
ふよふよと漂う筋斗雲の前を、鳥たちが飛んでいく。あ、こんな高いのにちょうちょだ。
「あぅー」
「ん?シュエはあの蝶が気になんのか?」
「う、」
「でっかくてきれいだろ?あいつはな、パオズ山にしかいねぇから、もしかするとまた見れるかもしんねぇぞ?」
へぇ、そんなんだ。パオズ山にしかいない蝶々、か。それだけでなんだかパオズ山が特別な場所みたいに思えてくるよ。
「あっちにはな、でっけぇ滝があんだ。その下にある川にはこりゃまたでっけぇ魚がいるわけだ」
お父さんは、パオズ山のあそこに花畑があるとか、北に行くと広い川が流れているとか、色んなことを教えてくれた。まるで小さな探検をしているみたいで、すっごく楽しかった。
「あう、あー!」
「シュエにもわかるか?あっちにはな、果物がたぁーっくさんなってんだぞ!」
へぇ、そうなんだ。
自力で歩けるようになったら行ってみようかな。
そもそも筋斗雲に乗れるかどうかわかんないけども。
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