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蟠る、揺れる




明るい光で目を覚ました。
眩しいと思ったのは、窓から差し込む大きな満月の光だった。
そういえば私って一応サイヤ人のハーフなんだよね。サイヤ人には尻尾があるみたいだけど、どうやら私にはないみたい。だから満月を直視しても大猿にはならないらしい。

ベビーベッドの隣では、スヤスヤと寝息を立てる両親。
こうやって一人になると、色々と考えてしまう。

私は、本当にここにいてよかったのかな。とか。どうして前世の記憶があるんだろうとか。
もともと私はドラゴンボールの物語に存在しない、言うなれば異物だ。何かの影響がきっと生じると思う。

静かな夜のせいかな。なかなかセンチメンタルになってしまう。


「シュエちゃん、どうかしただか?」


あ、お母さんだ。起こしちゃったかな。申し訳ないことをしてしまった。
お母さんは眠そうに目を擦ったあと、ベッドから降りて私を抱えた。


「ちょっとお散歩すんべ」

「あぅ」


深夜の散歩だなんてとても新鮮だ。
夜の冷たい風がさらさらと頬をなでる感覚に少しだけ目を瞑った。


「夜はやっぱり冷えるだな。見てみシュエちゃん。あそこで虫が鳴いてるだよ」


りぃん、りぃん、と鳴く虫たち。夜のパオズ山は、昼間と違ってとても静かだ。山を駆ける獣たちも、今はなりを潜めている。


「シュエちゃん、生まれてきてくれてありがとうな」


ぽつり、と月を見上げてお母さんが呟いた。


「おらな、嬉しいだ。悟空さがいて、シュエちゃんがいて、おっとうがいて、おらかいる。家族って不思議だべ。幸せってこういうことなのかもしんねぇな」


上手く言えねぇけども。
そう言ってはにかむお母さんをぼうっと見上げた。

…なんだ。私、ここにいてもいいんだ。この人の家族でいていいんだ。

自分では割り切ろう、割り切ろうとしていたけど、心のどこかではモヤモヤと割り切れずにいた。
それが、お母さんの言葉で霧が晴れていくみたいに蟠りがなくなっていく。

母は強し、とよく言ったものだ。
きっとこれから生まれてくる弟のことも、お母さんやお父さんのことも、私は守っていきたいと思った。


「さ、そろそろ戻るべ?夜更かしは体に悪いかんな」


お母さん、私、あなたの子供になれてよかったよ。






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