案外照れるらしい
こんにちはみなさん。ただいま私はおうちの中をハイハイで探検中です!
いつもベビーベッドにいたからか、こうやってハイハイしてまわってみるとこの家って意外と広いんだね。
赤ちゃんだからっていうものあるけど。
「あぅー」
ちなみにお母さんは洗濯物を干していて、お父さんは近くの川辺で修行してるよ。お父さんを見送ったときさ、舞空術!っていって飛んでったんだよ。いいなぁ、私も空飛びたいなぁ。
サイヤ人のハーフだから、練習すればきっとできるよね。
よし、私が二足歩行できるようななったらお父さんに教えてもらおっと!
…にしても、家に誰もいないって思ってたよりも静かなんだね。山の中だっていうこともプラスされて余計に。
外には出ちゃダメだってお母さんには言われたけど、家の中だけじゃやっぱり退屈だ。
…ちょっとならいいよね。すぐ戻ってくるんだもん。
こうして私はこっそりと外へ繰り出したのだった。
外はポカポカと暖かかった。まるで陽だまりの中にいるみたい!
真っ白いシーツが太陽の光を反射して眩しく輝いている。
「わん!」
お、犬だ!そこそこ大きい犬は灰色で、のっそのっそとと私に近付いてきた。じぃっとつぶらな瞳で見つめられて、そっと鼻先に手を伸ばした。
「わふ」
「う!」
うお、めっちゃふわふわ!!もふもふ!!国宝級のふわもふじゃ!!
可愛ええのぉ可愛ええのぉ!!
「わ、わんわん!」
「わん!」
「わう?」
「わん?」
「なんだシュエ、犬と会話してんのか?」
不意に頭上に影が落ちたと思ったら、私の体はあっさりと何かに持ち上げられた。
あ、お父さんだ。おかえりなさい!修行はもういいの?
「わん!」
「あー」
何かを察したのか、灰色のわんこは森の方へ駆けていった。あぁ、ふわもふが…
「シュエは動物が好きなんか?」
「あぃ」
罪なき動物は可愛いものだよ、お父さん。
「とーしゃ、」
「お?」
「とーしゃ、まんま」
ぎゃ、何だこれめっちゃ恥ずかしい。なんだまんまって。まぁおなかすいたのは事実だけれど…
あれ、そういえばお父さんがなんだか静かだ。どうかしたのかしらん。
「……………」
「とーしゃ?」
赤ちゃん特有のクリクリおめめでお父さんの顔を覗き込んでみる。可愛いだろ、あざといだろ、だって赤ちゃんだもの。
「………」
覗き込んだお父さんの顔は真っ赤だった。え、ど、どうしたのお父さん!?
「はは…なんか、照れるな。シュエに呼んでもらえんのがこんなに嬉しいとは思わなかったぞ」
どうやら感動を噛み締めていただけらしい。この人本当に一児の父親か。可愛すぎんだろうがよ。
「まんま!」
「お、そうだったな。よし、母ちゃんが待ってっから、帰るか」
「あい!」
家に帰ると抜け出したことがバレたのかお母さんにめちゃ怒られました。
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