子守りは得意なのだ
「だぁー、ばぶー」
「べぇー。トランクスくーん、高いたかぁーい!」
「きゃぁー!」
「ごめんねシュエちゃーん。トランクスの面倒みてもらっちゃって」
「いーえ!トランクスくんとってもいい子だから大丈夫ですよ。それに小さい子の面倒見るのは慣れてるんで」
ねー!と抱きかかえるトランクスくんに笑いかけるときゃっきゃ!と私の頬をぺしぺしはたいた。ギャンカワである。
赤ちゃんの頃から悟飯の面倒みてたからね。自分で言うのもあれだけどちびっ子のお世話はお手の物なんだから。
…にしてもこの子がベジータさんの子か…似てないな。いや、目つき悪いのはそっくりだけど…これがあのトランクスさんになるのか。それはそれでなんか微妙だなぁ。
「むむぅ…」
「あり、眠くなったのかな?」
くぁっと大きな欠伸をするトランクスくんはとても眠そうだ。悟飯もこんな可愛い時期があったなぁ。今も十分に可愛いけど。可愛いけど!!可愛くて尊いけど!!
「そういえばそろそろお昼寝の時間だわ…ありがとうシュエちゃん、私代わるわよ?」
「大丈夫ですよ。ブルマさんは緊急停止装置作ってて徹夜してたんでしょ?トランクスくんは私が預かってますから、ゆっくりしててくださいよ」
「本当?悪いわねぇ」
じゃあ、トランクスが起きたら呼んでね。
神殿の中に入って行ったブルマさんを見送る。うーん、悟飯たちが精神と時の部屋に入って3時間…意外と時間経つのって遅いなぁ。1日か…うん、頑張ろう。きっと悟飯は超サイヤ人になって出てくるに違いないし、お父さんがそうするだろう。なんせ私が見て見たい。悟飯の超サイヤ人化。きっと可愛いと思う。
すやすやと天使のような寝顔をさらけ出すトランクスくんの頬を突きながら空を見上げた。ら、なんかピッコロさんが逆さまに見えた。なにしてるのあーた。
「…ピッコロさんひっくり返ってなにしてんですか」
「お前が見上げすぎなだけだ。後ろに倒れるぞ」
「だぁーいじょうぶだよー」
「お前が大丈夫でも、トランクスが怪我でもしたらどうするんだ」
「え、ピッコロさんってば私にことは心配してくれないの?」
「……………」
「え、なにその沈黙待って待ってねぇピッコロさん」
スタスタと早歩きで去って行くピッコロさんに手を伸ばすものの無情にも空を切る。しかも腕にはトランクスくんを抱えているから、これ以上動けば落っこちてしまう。うわぁ、まじか…まじかピッコロさん…私ちょっと…ねぇピッコロさん…
「うぅ…ふぇッ…!」
「あぁあはいはいごめんね!泣かないでー!よしよーし!」
「うぇッ…!!」
「な、泣き止まない…しょうがないなぁ…シュエたんがお歌うたってあげるからねー」
トランクスくんの耳が私の心臓の位置に来るように抱えなおし、ゆらゆらと前後に揺れながら好きなあの歌を口ずさんだ。すると途端にぐずっていたトランクスくんが泣き止みだして、しばらくすると再びすやすやと寝息をたてた。かわゆい。悟飯には敵わないけどトランクスくんかわゆいよ。寝顔が尊い。
そういえば、悟飯もよくぐずったり、寝れないー!って言って私の布団にもぐりこんできた時も私が歌ってあげてたっけ。あの頃の悟飯は泣き虫だったなぁ。ちょっと転んだだけですーぐピーピー泣くし、弱音吐くし、可愛いし、ふにふにで柔らかかったし、なんかやたら私のこと大好きだったし。あ、今もか。それが見てごらんよ。泣かなくなったし、弱音も吐かなくなったし、変わらず可愛いし、ピッコロさんとお父さんのせいで筋肉質になっちゃったし。
そうそう聞いてよ!あの子私を腕1本で抱き上げれるようになってたんだよ?わけわかんないでしょ?私もわかんないよ。この前いきなり背後から掬われるようにお姫様抱っこされてさ、ファッ!?ってなったし。どうしたのって聞いたら「お姉ちゃんを抱っこしてみたくて…えへ」とか言うんだよ?お前実はフェアリータイプだろ。妖精の風とか吹き荒らしてんだろ。やめろよ私効果抜群だからさ。惚れてまうやろぉおおおおおお!!!!!!!
……あれ、なんで悟飯の話になってたんだけ…まぁいいや。とにかく小さい子はいつまでも可愛いよねって言いたかったの。後半私も何言ってるのかわかんなかったんだけどね。
「まぁでも、トランクスくんの将来は大丈夫だよね。あんなしっかりした人に成長するんだもん」
でも未来は変わるって言うよね。どうかこれから先ベジータさんの性格だけは似ませんようにと土下座する勢いで願った。
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