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胸に埋めて!



「はぁぁああ…」


気をめいいっぱい高めて手を前に突き出す。青白い光を十分に手に集めて、大きく振りかぶった。


「散画龍ッ!!」


瞬間放たれる青い1匹の龍。それは大きく咆哮しながら白い空間の彼方へ消えて行った。いいじゃんいいじゃんかっこいいじゃん!!!青い龍とかなにそれ厨二ッ!!ちなみにこの安直な名前は私のネーミングセンスが皆無なため、なんとなく思いついた画竜点睛の四字熟語から捩りました。

でもかっこいいでしょ?うまいことコントロールすれば自由自在に動かせるんだよ。

あともう何分かもすれば1年…外で言えば丸1日が経とうとしている。よく耐えたよ私。時には挫けそうになりもしたし、何度逃げ出したいと思ったことか…結局超サイヤ人は超えることができなかったけど、それを超越する力なら身に付けれた。後はもうやぶれかぶれだ。うん…正直に言おう。悟飯不足です。
ぐあぁあああああ…!!!会いたい会いたい会いたい会いたいあいたぁああああああいッ!!!!!悟飯が恋しいよぅ…


「…あぁ、あの時の悟飯ってこんな気持ちだったのか」


2年の空白。それには及ばないかもしれないけど、悟飯はこんなにも寂しい思いをしていたんだね。私の自惚れかもだけど…
…うん、確かに寂しいな。早く悟飯に会いたい。会いたいけど…
壁に立てかけてある姿見に自分の姿を映して項垂れた。胴着はボロボロのヨレヨレでそこかしこが破けていて、髪はボサボサで金髪も若干くすんで見える。これはー…うん、出る前にお風呂に入ろう。すっかり私物化した風呂にめいいっぱいお湯をはり、服を脱ぎ捨てた私は勢いよく湯船に飛び込んだ。


「ひゃっほぉおおおーッ!!!」


―ざっぱぁああああああんッ





「さっぱりした…!」


つやつや。やっぱりお風呂はいいものだね。全身の疲れがとれるって言うか…見てよこれ。髪の毛つやっつやなんだけど。ここのシャンプーってすっごいいいやつだと思う。だってあのくすんだ金髪がッ…!こんなにきれいに!!
1人で感激してるのはいいものの、余談だけど私今全裸です。あ、さすがにパンツは穿いてるよ?いやさ、だってあのボロボロのやつもう一度着るとか…嫌じゃないの。うーん、どうしたものやら…
しゃーないか、もっかい着とこ。出たら着替えたらいいし。うん、少しの辛抱だよ…うん…

いそいそと胴着を着直してドアの前に立つ。この向こうにみんなが…あぁ、早く会いたいなぁ。多少時間オーバーしちゃったけど。

さぁ、この部屋とはもうお別れだ。いざ行かん外へッ!!

ぐっとドアノブを握りしめ、力いっぱい開け放った。


「……」

「シュエ!やぁっと出てきたか!」

「お姉ちゃん…?」

「あっは…久しぶり、みんな」

「お、お前、シュエなのか…?驚いた、一瞬誰だかわからなかったぞ」

「えへ、超サイヤ人化してますからね。髪もバカみたいに伸びたし…」

「なるほどな」

「ははッ、やーっぱ同じこと考えてらぁ!」

「ん、まぁねー」


膝裏まで伸びきった髪の毛をつまんで持ち上げると、ピッコロさんは腕を組んだままふっと笑った。ちなみにヘアゴムは酷使しすぎたせいで開始3か月でご臨終しました。南無。
そんでもってお父さんたちは胴着ではなくベジータさんが着ていたサイヤ人の戦闘服を着ていたり。え、何あれ私知らないんだけど。あれってば丈夫だからあれ着て修行したかったなぁ…まぁいっか。
振り返って未だぼうっとしている悟飯に近付く。


「悟飯、久しぶり。あー…1日ぶり?日にち感覚がおかしくなってる」

「ッ…」

「悟飯?」

「ぅわ…!」


さっと顔をそむけた悟飯に愕然とした。ちょ、おま…今うわって言った?ねぇ言った?そんなにおねぇの顔が見たくなかったのか、はたまた気持ち悪すぎて見ていられなかったのか。どっちにしろショックには変わりない。あぁ、可愛い悟飯にも反抗期的な何かがやってきたのか…いずれ「うるさいババァ!」とか言われるんだろうなぁ…
何それつらたん。


「悟飯ー…そんなにおねぇが嫌だったならそうと言ってくれればよかったんに…」

「、え?」

「うん、なんかごめんよ…私ピッコロさんに服もらってくるわ。修行頑張ってね」

「ち、ちがッ…待ってお姉ちゃん!」


ふらふらと足取り覚束なく歩いた私の背中に勢いよく突撃してきた悟飯に前につんのめった。リアルに地面とちゅっちゅしそうになったんだけど踏ん張れた私を誰か褒めちぎって。全身全霊を込めて。ごめん言い過ぎた。とにもかくにもいきなりどったの。


「違うんだお姉ちゃん、あの…」

「え、何、なんなのかね君」

「お…お姉ちゃんがあまりにも変わりすぎてて…その…えっと…き、れぃ…で……」

「え、なんて言ったの?」

「ッ…な、なんでもない!!」


背中に引っ付いてるから悟飯の表情は私には見えない。結局最後の方は尻すぼみになっていったから何言ってたのかわかんないけど、こうやって抱き着いてくるってことは私まだ嫌われてないってことでいいんだよね!?ねッ!?きもいお姉ちゃんとか言われてないよね!?
やったね!!


「んんん悟飯ーッ!!」

「うひゃあッ!!」


ひぃいなんて可愛い悲鳴なのか!!聞きましたか全国のみなさんッ!!うちの弟のぷりちーさが今まさに放映されたし!!
うりゃうりゃと悟飯を抱きしめると、ちょうど顔が私の胸に埋まる高さだった。この歳の女子って成長早いよね。身体的な意味も込めて。ごめんねこんなぺったんこを押し付けて!!


「うりうりー!可愛ええのぉ可愛ええのぉ!」

「ふ…ッおね、ひゃ…!!」

「…シュエ、そのへんにしてやれ。悟飯の修行ができないだろう」

「あ、そうだった…ごめんね悟飯」

「ぷはぁッ!い、いいよ、大丈夫…」

「おーい、悟飯!まだかぁー?」

「い、今行きます!じゃ、お姉ちゃん…また」

「うん、頑張ってね」


顔をめいいっぱい真っ赤っかにさせた悟飯はすったかたーと瞬く間に神殿の中に消えて行った。…あれ、なんでだ。


「逃げられた…だと…」

「お前はなぁ…とりあえずその服をどうにかしてやるからこっち来い」


シュンッとボロボロだった私の服を物理的法則を無視して新品に変えたピッコロさんはもはや魔法使いなんじゃないかって思ってる。魔法戦士ナメック人。なにそれうける。全国放送を心待ちにしよう。


「…………ぶはッ」

「おい、なんで今俺の顔見て笑った」

「あ、ブルマさんだぁー。あの腕に抱えてる子は小さい頃のトランクスさんかな?うっわぁかーわいい!」

「聞けぇえええええッ!!!」


ピッコロさんの叫びに天津飯さんが苦笑した。






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