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コピーとオリジナル




「へぇ、ここが精神と時の部屋ねぇ…」


ベジータ改めベジータさんとトランクスさんと交代した私は、一面真っ白な空間が果てしなく続くこの部屋をぼけぇっと見回した。じんわりと蒸し暑いし、何より外の何倍も重力があるみたいで、まるで全身に巨大な岩を乗せられた気分だ。こんなところで1人で1年…何それ超絶寂しいんだけど。ちゃんとやっていけるだろうかめちゃくちゃ不安…


「…とにもかくにも、嘆いてる暇はないんだ。1年…うん…頑張ろう」


寂しいけど。
ほろり、と涙がちょちょ切れるもの我慢して私は早速超サイヤ人になった。寝るとき以外はできるだけこの状態でいよう。今はちょっとつらいけど、千里も道も一歩からってね。さぁ、まずはこの空間に慣れるのが先だ。それから基礎をみっちり鍛え直そうっと。

部屋から出た私は舞空術で宙に浮き、部屋から北に向かって一直線に飛んだ。確かお父さんは地球と同じくらいの広さだって言ってたよね。この重力に慣れがてら空間把握しよう。
飛び続けて大体4時間くらいだろうか。見事に何もない真っ白な空間に早くも飽き飽きしてきた私は内心げんなりしている。くっそ、飽きた…こんなんだったら大人しく部屋の前で鍛錬すればよかったなぁ。選択ミスったかも。しかも、下手すりゃ私がこの中で迷子になる可能性もあるわけで。…待ってねぇ待って、私早まったかもしれないんだけど。


「セルと戦う前にここで果てるとか笑えない…ッ!!いやぁあ悟飯ー!!おねぇここで死にたく………あぁああああ見っけぇええええええッ!!!!」


寂しかったよマイホームぅうううう!!!
念願の部屋に辿りつき備え付けられたベッドにジャンピングダイブを決め込んだ私。ほ、本気で迷子になるかと思った…


「…私、本当にやっていけるのかね…」


改めて一抹の不安を覚えた瞬間であった。
………特訓しよ。





*****



「むぅ……」


精神と時の部屋に入って半年。変動の激しい気温や気が狂いそうになるこの空間、そして常日頃の超サイヤ人化にもすっかり慣れた頃、私はお父さんが使っていた瞬間移動を習得しようと独自の方法で試行錯誤していた。本来ならば気を感じとってその場所に移動するんだけど、私の場合場所が場所だからね。私以外がいないこの空間では気を感知しろと言う方が難しい。そのため、見たことのある場所なら思い浮かべるだけで瞬時に移動できるようになったのだ。本当は気を感知した方が何かと都合がいいのだけれど、それはまた追々やって行こうと思ってる。

気をコピーするのはとても神経を使うんだよね。技を発動するときの気の流れを読み取り、解析し、コピーする。頭を使うし、何よりすっごくお腹が減る。


「ふッ…」


シュンッと私がとんだ先は神殿を模した部屋の裏。屋根の上、そして食料庫の前。うん、中々様になって来たんじゃないの?よぅし、ここから出たらお父さんみたいに気を感じ取るだけで瞬間移動できるようになろーっと!


「あーもうお腹すいた!シチューでも作ろう。冷凍すれば日持ちするし、ご飯にかけたりしたらドリアみたいになる!食料はいっぱいある!!うっひー!涎垂れそう!!」


ぽいぽーいっと台所に材料と調味料を放り投げ(よい子は真似しないでね!)、引っかかってあったエプロンを身に着けた。あ、じゃがいもは好きだからいっぱい入れとこう。大きめに切って。


「あ、」


ぐつぐつと煮込む音を聞きながらふと思ったことを口に出した。


「そう言えば、私オリジナルの技とかってないよね…」


今までの戦いを振り返ってみよう。魔閃光、魔貫光殺砲、かめはめ波、気円斬、気功砲、ギャリック砲は…頑張ったらできそうかも。本物を見たことがないから今はコピーできないけど。うん、思い返すだけでコピーだらけだ。まいったなぁ…いい年こいて技とか言ってるけど、実際なかったらなーんか寂しいんだよねぇ。うん。作ろう。自作の技。せっかくだからかっこいいのがいいなぁ。んでもって厨二臭いの。ひぃいいなんだか楽しくなってきた!!

ごっくん、と勢いよくシチューを嚥下した私は片付けもそこそこに外に飛び出した。


「よーし、やったるでぇえええーッ!!!」


自分だけの技を作るのがこんなにも楽しいだなんて思わなかったんだけど。






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