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一触即発クラッシャー




「悟空ぅうううううッ!!」

「「「「……え」」」」


どごぉんッとお父さんもろとも飛行機の壁を突き破って行ったクリリンさんを口をあんぐりと開けて見送った私たちであった。


「いやぁ、待ってたんだぜ!!もう、すっかりいいのか!?」

「あぁ。腹は減ってっけどな」

「あっは!悟空らしいや!」


目の前に立つお父さんをぼけぇっと見上げる。病に伏せっていた面影はもうないと言っていいほどすっきりした顔をしていて、胸の中に安堵感がぶわりと広がった。よかった…お父さん元気になったんだね。本当に…


「よかった…」

「うぐぅ…!」

「おめぇたちにも心配かけた見てえだな」


ぐりんぐりんと私と悟飯の頭をなでくり回すお父さんは、それと…と一度言葉を切ると私の脇の下に手を入れて持ち上げた。


「うぉわッ!!ちょ、お父さん!?」

「シュエー、オラ暗くなる前に帰って来いって言ったろ?ずいぶん遅かったじゃねぇか」

「…うん、ごめんね」

「気にすんな!オラの方こそ、気付いてやれなくてごめんな?眠ってる間、おめぇの歌がずっと聞こえてたぞ」

「ッ…べ、別に気にしてないし!あと、お父さんのために歌ったわけじゃないし!暇だから歌っただけだし!」

「ははッ。そうけ」


あぁ、どうやらお父さんには全部お見通しのようだ。からりと笑うお父さんに思わず悟飯と抱き着いた。


「…オラ、今のままじゃ人造人間にもセルってやつにも勝てる気がしねぇ。だからシュエと悟飯連れて修行行ってくる。1日で1年修行できるところに」

「ま、待ってお父さん!お父さんは一応病み上がりなんだよ?そんないきなり動いたりしたら…」

「でぇーじょうぶだって!シュエってばチチと同じこと言うんだからよ」

「だってぇ…ねぇ悟飯」

「うん…」

「心配なのはわかるが、悟空だぞ。いつものことじゃないか。俺たちが諦めるしかないんだ」

「ピッコロぉ…」


がっくりと肩を落としたお父さんをピッコロさんは景気よく鼻で笑い飛ばした。この2人て本当にいいコンビだよね。漫才できるんじゃないの?


「とにかく、精神と時の部屋に行くのなら早く行くんだな。セルは人間をどんどん殺し、どんどん力をつけてきている。17号18号と合体して完全体にでもなられたりしたら厄介だ」

「あぁ。そうする。シュエ、悟飯」

「「はい」」


差し出されたお父さんの手をしっかりと握る。額に指を寄せたお父さん。視界が一瞬ブレ、目を瞬かせた次の瞬間には私たちは険しい岩山が連なる場所にいた。
い、今のが瞬間移動…なんて便利なのか。気の流れとコツさえつかめればコピーできそうなんだけど、やっぱ1回じゃわかんないや。


「悟空、さん…!?」


驚いた顔のトランクスさんが面白くて思わず笑った私を誰か許してくれ。


「どうだ、特訓の成果は」

「…ダメです。父さんは俺をただの厄介者にしか…修行してくれって頼んでも、邪魔だ、失せろの一点張りで」


あー…ベジータは言うかもね。あの人、他人と群れるの好きそうじゃないし。そもそも今まで過ごしてきた環境が影響してるのかな。
ふわり、と浮かんだお父さんはベジータに近くに飛んで行った。


「…悟空さん、もう病気はいいんですか?」

「はい。おかげさまですっかり」

「そうですか…よかったです。ところで、みなさんはどうしてここへ?」

「お父さんが1日で1年分修行できるところへ連れて行ってくれるみたいで、それならベジータさんやトランクスさんもって」

「い、1日で1年分…!?そんなところがあるんですか…!?」

「神様の神殿に。どうせならいっそ、みんなで超サイヤ人越えちゃいましょーよ」


ほら、よく言うじゃない?赤信号みんなで渡れば怖くないって。あ、よい子はしちゃダメだからね。危ないから。
そんなことを離しているうちに、説得(?)に成功したらしいお父さんがベジータを連れて戻って来た。うわ、ベジータ久しぶりだなぁ。変わんねー。


「や、ベジータ…あー…ベジータさん」

「…なんで言い直した」

「いや、前々から改めないとって思ってて。だってさ、悪意感じない?子供に呼び捨てされるんだよ?どーよそれ」

「貴様の呼びやすいようにすればいいだろうが」

「あ、そう?なら精一杯の親しみを込めて、ベジータくんで」

「ぶっ殺すぞ」

「やめろよそーゆーのッ!!」


唯一事情を知る悟飯だけがこっそり吹き出したのをベジータは目敏く見つけ睨み付けた。えー、いいと思ったのに。ベジータくん。トランクスさんは私とベジータのやり取りを見てぽかんとしていた。お父さんは心底おかしそうに笑っていたけど。

結局ベジータさんになりました。





精神と時の部屋には、まずベジータさんとトランクスさんが入ることになった。その後に私1人。そしてお父さんと悟飯。お父さんと悟飯は私を1人で入らせたくなかったみたいだけど、ポポさん曰くこの部屋の定員が2人なのだと。お父さんはとりあえず悟飯を超サイヤ人にしたいみたいだから、必然的に私が1人になる。


「シュエ、今ここで超サイヤ人になってみろ」


神殿の外で2人を待っている間、唐突にお父さんがそんなことを言った。


「おめぇのことだから、今まで何もせずにいたわけじゃないんだろ?」

「まぁ、ね…それなりにコントロールできるようにはなったつもりだよ」

「お姉ちゃん、やっぱり超サイヤ人になれたんだね」

「ん」


目を閉じて、深く息を吸う。そして思いっきり気を開放すれば、あっという間に私の周りに黄金が輝いた。視界の隅でゆらゆらと金色が揺れる。


「…こんな感じ?」

「うん、上出来だ。オラも…」


ふんッと気合を入れたお父さんは私と同じように超サイヤ人になると、一気に私の目の前まで詰め寄った。瞬間繰り出されるいくつもの拳を感覚的に避ける。


「お父さん!?」

「だだだだッ!!!」

「ッ…でぁッ!!」

「くッ、」


私だって避けてばかりじゃないんだから。伊達に足技が得意なわけじゃないよ。空を切った回し蹴りはお父さんの頬を掠めた。体を捻ってもう一度。床に手をついてそのままの勢いで蹴り上げる。お父さんの顎に直撃した蹴り。けれどお父さんは少しもふら付くこともなく私の足首を掴みあげ、地面に叩きつけられた。


「ぐぁあッ!!」

「これだけ動けてたら十分だ。よくここまで仕上げたな」

「うぅ…まぁね、これでもちゃんとお父さんの子供だから」


超サイヤ人化を解いたお父さんはどっかりと床に腰を下ろした。私は超サイヤ人のままうまく気をコントロールし、壁に凭れ掛かる。


「…戻らねぇのか?」

「うん。このままこうやっていた方が早く超サイヤ人に慣れるし、体の負担を減らすのにもいいと思って」

「…なるほどな。考えてることはオラと同じってことか」


ふーん、お父さんも同じこと考えてたんだ。やっぱり親子だね、私たち。未だぽかん、と口を半開きにして私たちを見ていた悟飯が面白くって面白くって。いつか顎落ちるんじゃないのあれ。


「ふはッ、悟飯口開きっぱなし」

「むご…」

「悟飯、オラはおめぇを超サイヤ人にするつもりだ」

「えッ!?ぼ、僕も!?」

「あぁ。精神と時の部屋でその特訓すっからな」

「…僕、なれるでしょうか」

「なれるよー。だって悟飯は私の弟だよ?私がなれたんだから大丈夫だって。ほら!シャキッとする!」

「いでッ!」


前につんのめった悟飯はぷっくーとほっぺを可愛らしく膨らませて私を見た。か…ッ!かんわええのぉお…ッ!!あざといけどそんなの気にならないくらいかわええよぉ…!!!あ、こら悟飯!そんな顔で私に近付くんじゃありません!!(萌え的な意味で)悶え苦しむでしょうがッ!!私がッ!!その広げた腕で何をしようって言うんだ!!まさか私に抱き着いたりしないよな!?そんなことしてみろ私(萌え剥げて)死ぬぞ!!ちょ、おま…!アッー!


「…あいつらっていつまでも仲がいいよなぁ。なぁポポ」

「ポポ、知らない」






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