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隣同士がいちばん自然



「これ、は…」


ザーッと砂嵐が流れるテレビに部屋にいる全員が言葉を失った。トランクスさんのとはまた別のタイムマシンを見つけ謎ができたばかりなのにも関わらず、ジンジャータウンでの服だけが残る怪奇現象まで浮上して…一体この世界はどうなっているんだろうか。


「じゃあ、その抜け殻から出てきたやつの仕業だってことか…?」

「えぇ…恐らくそうだと思います。場所も近いし…」


カプセルケースを険しい顔で見つめるトランクスさんは、くるりと踵を返すと玄関に向かって歩いて行った。


「トランクスさん…?」

「俺、行ってたしかめてきます。本当に恐ろしいのは人造人間なんですから」

「そ、そうだけど…」


うーん、どうにかこうにかして彼の力になれないだろうか。さすがにあんなところに1人で行くのもいささか危険だし…


「あの、私も行くよ…?」

「シュエさんが?」

「トランクスさんの世界と少し変わってしまったのも、私がいるからこそ影響したのかもしれないし。対して役には立たないかもしれないけど、トランクスさんさえよければ連れて行ってほしい」

「ぼ、僕も行きますッ!!」

「ダメだ行っちゃッ!!おめぇら2人とも、絶対に行かせねぇだよ!!悟空さが寝てる時くれぇもう少しいい子でいてもいいべ!?」

「で、でもお母さん…」

「ダメだ!この宇宙がなくなったっておらのそばにいろ!!シュエちゃんなんかなおのこと!!もうどこにもやらねぇからな!!」

「おぅふ…」

「そ、そんなあ…」


お母さんの剣幕に結局はトランクスさんが1人でジンジャータウンに行くことになった。お母さんの言葉は涙がちょちょ切れそうになるくらいとても嬉しい。けど、私はやっぱり誰かの役に立ちたいな。


「…私、お父さんのところにいるね。お母さん付きっきりだったでしょ?私が変わるから、ゆっくりしててよ」

「シュエちゃん…」


水の入った桶とお母さんが持ってきていた本を片手に2階に上がって行く。落ち着いた呼吸で眠るお父さんの額にあるタオルを変えてから手持ちの本を開いた。


「、…ぐッ」

「お父さん、大丈夫だよ」


時折苦しそうにうめくお父さん。タオルで汗を拭いてあげたり、手を握りしめながら本を読んだり、悟飯に歌ってあげてた歌を歌ったり。外でいろんな人の気を感じたけど、どういうことだろう。お父さんはここで寝てるし、ベジータだって恐らくどこか別の場所にいるはず。なぁんか、あまりよろしくない感じだよね。本当、意味わかんない…


「お姉ちゃん?」

「悟飯、どうかした?」

「…ううん、なんでもない」


そう言って私の隣に座り込んだ悟飯は、こてんと頭を私の肩に乗せ目を瞑った。一体どうしたんだろうか。いつもに増してナイーブだ。眠いのかな。


「……」

「…眠たいのなら膝かそうか?」

「いい。…このままがいい」

「そう?」


なんか、今日はやけに甘えてくるね。可愛いからいいのだけど。でもちょっと心配になってくる。すぐそばにある悟飯の頭をなでながらお父さんの布団を掛け直す。たまに大きな伸びをするから、もう少しで目を覚ますと思うな。早く元気になってピクニックしよう、お父さん。


「…お姉ちゃんは、僕のことどう思ってる?」

「え、どったの藪から棒に」

「教えてよ」


き、今日はやけにぐいぐいくるね…本当にどうしたんだろうか。


「うーん、そうだなぁ。可愛い可愛い私の弟?」

「…それだけ?」

「えッ。あー…優しいし、仲間思い。けどちょっとお人好しかな。泣き虫で弱虫だったけど、今は頼もしくてかっこいい大好きな自慢の弟」

「…そっか」

「…なんだったのかね今のは」

「なんでしょう?推理してみてよ、お姉ちゃん」

「無茶苦茶やでぇ…」


結局この子は私に何を言わせたかったのか。いまいちよくわかんないけど、まぁ眠いのなら寝てていいよ。私本読んでるから。そう思って手元に視線を落とそうとした瞬間、悟飯の手によって本を取り上げられ、真正面から抱き着かれた。私の胸に顔を埋めてるもんだから髪の毛が顎に当たってくすぐったい。本当にどうしたの?傷心でもしてんの?


「悟飯ー…どうしたのさ。寂しいの?」

「…そう、なのかもしれない。なんだか胸がぎゅうって締め付けられて…こうやってお姉ちゃんにくっついていればマシになるから。だから…」

「いいよー。おねぇがぎゅーってしててあげるね」

「…うん」


ゆっくりと力を抜いて私に体を預けた悟飯を抱きしめ直して前後にゆらゆらと揺れる。ふは、懐かしいなぁ。悟飯が泣き虫だった頃も、こうやってぎゅーって抱きしめて揺らしてあげるとすぐに泣き止んだんだよね。いくら成長したって甘えたはまだまだ健在だってことか。可愛いやつめ。


「…僕、お姉ちゃんの匂い好き」

「そーぉ?洗剤は同じだと思うけど…」

「とっても落ち着く。優しくて、甘い匂い」

「…なんか、照れるなぁ。やめたまえよ悟飯くんや」

「…もうちょっとだけ」


すぅー…
め、めっちゃ吸い込まれてる…私の匂いの何をお気に召したのか。甚だ疑問だけど、まぁそれで悟飯の気が済むのならいっか。


「…………」

「…お姉ちゃん、心臓の音速いよ?」

「うっさいおバカ!」






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