碧空と向日葵 | ナノ






 昨日決めた通り、朝ご飯の席で虎子さんに何でも良いから手伝いをしたい旨を伝えると、快く許可をして貰えた。誰も何も言わなかったが、様子を見るに、多分竜士くんが予め虎子さんに言っておいてくれたらしい。良かったなあ、と背中を叩く竜士くんにありがとう、と昨日と同じようにまた伝えると、私が気付いているとは思わなかったのか驚いた顔をした後、観念した様子で「ええてええて、」とはにかんだ。
 大事な弟分がここまでしてくれたのだ、私も頑張らなくてはならない。今日さっそく与えられた仕事は、お洗濯だ。私にしては珍しく気合いを入れながら、朝ご飯のお皿洗いを終えて席を立った、その時だった。



「かなえー!」

「うえっ、え、青ちゃん?」



 障子戸を開けてひょっこりと顔を出したのは、先日仲良くなった宝生青ちゃんだった。一体どうしたのだろうか。食卓で食後のお茶を飲んでいる竜士くんは何かを悟っているようで、「はよ行った方がええで、」と私を促す。そんな彼に従って「湯のみはシンクに置いておいてね」と伝えてから青ちゃんの方へ向かった。



「おはよう、青ちゃん」

「おはよぉ!かなえ、今から手伝いするんやろ?せやったら、ちょおあげたいものあるさかい、一緒に来よし!」



 にこりと明るく笑った青ちゃんの白い手に引かれるまま、廊下を小走りで進む。ついたのは、居間から少々離れた小部屋。どうやら私が借りている部屋と同じように空き部屋らしい。何があるのかときょろきょろ見回す私に、青ちゃんがにまにまと笑う。そして隠していたらしい何かを取り出し、「じゃーん!」と私に見せてくれた。



「……着物?」

「単衣ゆうんよ。かなえ、流石に和服は持ってきとらんえ?私のお下がりになってまうけど、でもこの柄ならきっとかなえにも似合うはずや!」



 にこにこと私に和服を当ててくれる青ちゃんに、促されるままそれを着る。青ちゃんにも手伝って貰って着たそれは、涼やかな水色の生地に黄色の帯が鮮やかで。鏡に映る姿に、言葉を失う。



「……っ、青ちゃん!」

「ふえっ!?」



 言葉が見つからず、衝動のまま青ちゃんにぎゅうと抱きついた。嬉しい、嬉しい、嬉しい!竜士くんだけじゃなく、青ちゃんにまで背中を押してもらった。これからしようとする一歩を認めてもらえたような感覚に、私は包まれる。周りの人には何でもないようなことでも、私にとってはいつだって大きくて。竜士くんは変わったと言ってくれたけれど、どうしたってやっぱり、根っこの部分は臆病な私なのだ。
 無言のまま抱きついてくる私に、青ちゃんはやはり驚いているようだった。それでも私の気持ちは察してくれたようで、ふにゃりと笑って、「かなえ、よお似合っとるなあ」と抱き返してくれた。

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