Gift | ナノ

四種のベリィについて
*現パロですよ。
*友人望ちゃん宅のお嬢さん達が当サイト長編主のお嬢さんと絡んでくれたよ!
*それぞれのお相手は作中にて。
*ざっくり望ちゃん宅お嬢さんズ
→アスカ(敬語が口癖の礼儀正しい女の子)
→ユエ(言葉少ない女の子、プラチナホワイトの銀髪)
→ロンルゥナorロン(さばさば姉御肌のまとめ役)




「女子会?」
「はいっ。花の女子会です、男の人は来たらダメですからね?」
「…」

「アスカと、ロン、と…いとと、」
「…最近おまえらよくツルんでんなァ。」
「女ばかりで大丈夫なのか…?」

「カフェ。こないだ出来たろ?ケーキが美味いんだってさ。」
「ルフィ先輩が美味いって言ってたべ!」

「夕方までには帰ってくるから…行ってきてもいい、かな?」
「…終わったら連絡しろ、迎えに行く。」

そんなそれぞれのやり取りが、四回分。
お上品な時計の針が二と十二を指した頃にベルベットを着飾った椅子がカタンと音立てた。イチゴのヤツが美味しそうだった、何を頼もうか、と他愛ない話を楽しげに語り合い…メニューを持ったウェイトレスが訪れるまで可愛らしいさえずりは続くのだった。

「どれも美味しそう…迷うー…!」

幸せな悩みに小首をかしげるアスカはメニュー表を開いては、ううんと小さくうなる。ぱたぱたと爪先を動かして無邪気さを振りまけば一緒になって黒髪も揺れるのだった。

「あたしガッツリ行こうかなー。」

じいとメニュー表を覗き込むロンルゥナはうっとおしげに唐紅に近い色の長髪を耳に掛ける。メニューの写真はどれもメルヘンチックで可愛らしい、そして飛び切り美味しそうだった。口の中はもう既に甘酸っぱいイチゴの果汁を今か今かと待ち望んでいる。

「ケーキ…」
「ユエさんはケーキにするのかな?ここにケーキセットが載ってるよ。」
「…ん。」

控えめながらも瞳を輝かせているユエにいとは微笑ましさを覚え、そしてメニューの写真に指を乗せる。光沢のある白の陶磁器は彼女の髪の色にそっくりだ。

「んー…、じゃあ私はジェラートプレートにしようかな。」
「皆、上手にばらけちゃいましたね。」
「なら食べ合いっこだろ!」
「ロンルゥナさんナイスアイディアですっ。」
「よっしゃ決まり!ー…すいませーん!」

ロンルゥナがひらひらと片手を上げれば後は流れるまま。メニューとドリンクを伝えれば直ぐに彼女達の話題の中心はフルーツとお砂糖から駆け足で離れていく。

「ローが渋るんですよー。出掛ける前になって『おれも行く』って言われちゃいました。はー…」
「…あー…うん。あいつなら言いそう。」

お冷やを片手に回せばカランコロン。やはり話題は『そちらの方面』へとシフしていく。おまえも大変だねと言わんばかりの音に軽く苦笑するのはロンルゥナだった。それだけ仲が良いのだ、事実昨日も指を絡ませて歩いていた姿を目撃したのだから。

「でも…アスカ…困った顔して、ない…」
「ふふっ。そうだね。」

相手がローだからアスカは困った、迷惑だとこれっぽっちも持ち合わせてはいない。それをお見通しなのはお揃いのベルベットに腰掛けた面々だ。ユエといとは顔を見合わせて柔らかな雰囲気を滲ませるのだった。

「ロン、は、」
「ん?あたし?」
「バルト、ロメオ…ルフィが、前行ったって…」
「それねぇ…。」

ルフィ先輩が行ったんならおれも!そんな事を言っていた気がする。ルフィ先輩くんだりで瞳をキラキラさせていた午前中の悪人ヅラを思い返せばどうにも心が笑い声を上げるのだった。
あァ、可愛いやつめ。

「行きたい!って目ぇキラッキラさせてたよ。置いてきたけど。」
「さ、流石ロンルゥナさん…。」
「いとは…?ミホーク、教授…」
「あはは…」

『生徒に手を出した教授』をユエは思い出す。密やかに噂されている言葉の羅列は紛れも無く本当だと当事者から聞いたのはつい最近だ。

「よく『行くな駄目だ』って言いませんでしたねぇ…」

もっとお出掛けしたい、とアスカ達が思っていても件の教授が彼女を自宅なり研究室なりに引っ張り込むのでままならないのだ。

「心配性なんだと思うの、ミホークは。だから…」
「ナイ。」
「それはナイです。」
「…ええ…っ?」

あの男に限ってそれは無い、といとの台詞に残りの面々は心中うなるのだった。…それはいとだけに対してだろう。
しかしながら当の彼女達にもその台詞が当てはまるのだ、例えば医者を目指すあの男であり、工学部の彼らであり、悪人ヅラの歳下である。しかしそれを教える人間は生憎ここには居なかった。

「えー、と。心配性っていうならユエさんの方もだと思うよ…?キッドさんいつも気遣っているなって見ててわかっちゃうもの。」
「…私、は、」
「うんうん。お姫様と騎士って感じです。…キラーさんはお母さんっぽいと思う事は多々ありますけど。」
「ははっ、猛獣使いの、ってアタマにつきそうだけど。」

こくこくと頷くアスカの頭に浮かぶのは赤と金の二色であった。初めて出会った時はユエはまるで何処ぞの猛獣に囲まれてしまっている、と錯覚してしまったが…蓋を開けば『おまえが心底大切だ』という蕩けそうな感情が男の厳めしい顔の下にあったのだ。こういうのをお似合い、だというのだろう。閑話休題。

「違いない。です。」

ロンルゥナの台詞にアスカは『金色』の方の口癖を真似て頬杖をつくのだった。
なんだ、すっかり各々に惚気話になってしまった。
楽しかったから、いいか。

「お待たせしましたー。」
「おっ。来た来た。」

話もひとくさり、一呼吸した後に丁度よく頼んでいたメニューが運ばれて来た。宝石そっくりのラズベリー、艶やかなブルーベリー…ストロベリーは白いクリームの上で王様よろしく佇んでいた。クランベリーはわあわあきゃあきゃあとソースの中で遊んでいる。

「食べるの、勿体無い…!絵本の中から出てきたみたいです…でも食べますよ…!」
「クリーム、ふわふわ。」

フォークを早速握り締めた二人を『これが可愛い女の子というものか』とロンルゥナはうむうむと妙に納得してから端末のカメラモードを起動させるのだった。

「すごくおいしそう…いただきますっ。」

いともにこにことスプーンに手を伸ばす。柄の長い一つをロンルゥナに差し出し、そして自分の物を持ち直す。一口食べればとろんとしたクリームと、甘酸っぱいフルーツが舌の上で転がって誰ともなく顔を綻ばせるのだった。

「おいしー…幸せです…。」
「…バル、今度連れて来てやろ。うまっ。」

くふんくふんと含んだ微笑みが漏れるのは、美味しさ故だ。当然だと言う様にパウダーシュガーがミントの葉の上で揺れている。
かちゃん、と小さくカップが鳴って甘いクリーム達は甘いお菓子が似合う彼女達に救い取られていく。最後のひとかけらはユエが飲み込んで、気付けば短い方の針は数字の四を静かに指していたのだった。

「…う、わわわ。メールめっちゃ来てます、ローから。」
「なんて?」
「要約すると…まだか、です。」

何気なしに時間を端末で確認したらSNSとメールの嵐が液晶の向こうで起こっていた。から笑いを浮かべるアスカはちょっとメールしときます。と視線を下に向けるのだった。
もうお開きです。
そうか。迎えに行くから待ってろ。
ええ?ここまで?
悪いか?
いえ、そういう事じゃないんですが…。

「私、ローが来たらお先に失礼しますねー。」
「…甲斐甲斐しいなー。アスカの旦那。」

待たせるのもアレなので、といそいそと帰る支度を始めるアスカに『気にするな』とロンルゥナはもう一度応えるのだった。そしてチカチカ光る液晶。

「…あ。あたしもバルから来た。ふーん、バルも来るってさ。」
「バルトロメオさん小まめな方だもんねぇ。」

ふにゃ、と微笑むいとにロンルゥナはやたら擽ったい感情に襲われて『センセは?』とだけ視線を外しながら漏らすのだった。恋人が褒められるのはどうにもこんなに嬉しいものか。

「もう少ししたらお迎えに来てくれるの。お出掛けの条件が『これ』で。」
「外を一人で歩かせて堪るかー!ってやつか。」
「…過保護…」
「ユエさんとこもですからソレ。」

絶対ユエさんところも連絡入ってますって、とアスカが確信した口調で声を出す。ユエは一拍考えて、そして液晶画面を覗き込むと着信履歴が四回、メールも四回。…そういえばサイレントモードを解除して無かった。

「…キッド、来るって。『待ってろ』って。」
「…うわわ…全員集合ですねぇ。」
「偶然、にしちゃあ都合がいいな…」

あぁ、きっとこの後カフェは賑やかさを増す筈だと、そう思って含み笑いを引っ込めたのは下膳に来たウェイトレスだ。
ベリーから始まった女子会はもうすぐお開き、かちゃんと響く陶器の音が甘やかな彼女達の声に混じって溶けていくのだった。
長い針がコチンとまた動く。


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