Gift | ナノ

鷹の目とお嬢さん
※夢絵があるよ。



宵の明星も遥か彼方。月は既に夜空の道を半分通り過ぎていた。それ程までの深夜の一幕である。
その日は島の端まで出向いており、帰るのが随分と遅くなってしまっていた。修行を付けてやっていた年若い剣士はよたよたと自室へと消えて行き、己も自室へと戻っていく。

「…なまえ?」

居なかった。愛しい妻が。
酷い焦燥感に駆られて足早になってしまった事すら気に留めず、金色の瞳を細めては見開いてを繰り返し小柄なその姿を探すのだった。

「なまえ、」

廊下の長さに不快を覚え、録に探してもいない癖に焦りは膨らむ。大凡の場所なら見当付いている筈であるというのにかの男はそれでも、苦々しいかんばせを隠そうともしなかったのだ。

「なまえ。…やはり、」

開いたドアはキッチン。テーブルに突っ伏してすやすやと寝息を立てる妻が居た。見つけた。
手習いのノートを下敷いて手にはペンが申し訳程度に引っ掛っていた。待っている内に眠気に負けたであろう姿に、ようやっと男は口元を弛ませる。

「なまえ、今帰った。」

遅くなってすまぬ。と柔らかく囁けば妻はボンヤリと瞳を開けて蕩けてしまう様な微笑みを己に与えてくれるのだ。

「おかえりなさい。ミホーク…。」

ああ、何と愛おしい。
半分夢見心地である妻はそれでも己へと手を差し伸べてくれる。幼くも甘やかなその仕草に心臓に熱が篭っていった。
抱き上げて、一等大切に包み込むのは己だけが許された事。
何もかも愛くるしいなまえに口付けを落とし男は機嫌良く自室へと歩を進めるのであった。



prev next

bkm
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -