Primeiro estrela de noite | ナノ

三話目
  あれから夜凪の頃合いになって漸く。あっちに行ったりこっちに行ったり、思い描いていた『会議』とは斜め上にずれてしまった結果となり、あまつとんでもない発言をルフィから頂戴してしまったなまえであった。

『明日もダイガクまで迎えにいってやるよ!』
『うん、ありがとう。でもね気持ちだけ受け取らせてちょうだい?一人で外に出るのは物騒なの。だから一人で出歩くのは危ないから、お家で待っていてね?』
『おれ強いから大丈夫だ!』
『子どもを攫っちゃう悪い人が出るってニュースで言ってたの。ルフィに何かあったらルフィのご家族に申し訳ないし、私も心配で堪らないよ。』
『なまえは心配するのが得意だよなぁ。安心しろ、おれ谷から落とされても無事だったし、山賊ぐらいならぼこぼこにしてやるから!』
『へっ…!?』
『うん?』

  …あぁ、この世界の常識を通用しないんだなぁ…としみじみ実感したなまえは考えて考えあぐねたのだ。『じっとしていてね』などルフィにお願いして叶う筈も無く、まさに海を山にするようなものだと充分に実感している。主に彼の性格であり、言動でありエトセトラ。
  そしてなまえはルフィに防犯ブザーとお小遣いの入ったポーチを渡したのだった。

「一緒に帰る時ちょっとだけ寄り道しちゃおうか。」
「デカ店とかかっ?」
「そうだね、デカ店とか公園とかね。」

  寄り道の単語に途端顔をキラキラとさせるルフィになまえはくすっと微笑ってしまう。やはり遊び足りなく暇なのだろう、同じ年頃の子とすぐに仲良くなってしまいそうなルフィではあるが…だが肝心の彼らはその時間皆小学校に行っている。
  少しでも彼の笑顔を引き出せるのなら…と半ば願う様に思いそれから彼に不自由をさせてしまう心苦しさに「ごめんね」と目線を合わせて呟くのだった。

「我慢させてばっかりでごめんなさい。」
「ししっ。いーよ、なまえ気にすんな。」
「…。」
「なまえ?」
「あ、うん、なんでもないよ…」

  不意に見せたルフィの表情がいつもの笑顔と随分雰囲気が違っていた。頼り甲斐がある、とは少し違って強いていうなら身を預けてしまってもちっとも不安にならない、ような…じんわりと心が温まるような。とかく初めて覚えた感覚だった。

(…こんな笑顔もするんだ、ルフィって…)

  それからは、『宣言』した通り。ルフィが大学までお迎えになるのが日課になっていた。時間に多少のずれがあるのはご愛嬌。道中物珍しさに目移りして楽しい寄り道をしている、との事だ。ルフィが喜々として教えてくれる。
  なまえはルフィが大学に来ても迷わないように、いつも講義が終わると木陰のベンチに座って待っているのだった。そして、それが何故か矢鱈と楽しみになってしまったのだ。今日はどんな冒険をしたの?と彼に聞く度に胸がドキドキする。

(平和だなぁ…)

 木陰の隙間から零れて出来た陽だまりをぼんやり眺めてなまえはルフィの到着を待っている。何かのサークルなのだろう、声を揃えて走り去って行く音は平穏そのものを感じさせた。

(本当に、眠たくなっちゃいそう…)

  平穏なのはルフィとの関係も、だろう。依然としてきっかけがあれば「なまえが好きだー」と言われくっつかれているがそれだけ。それだけで終わって彼はししし、と真夏のお日様そっくりに笑ってみせるだめなのだ。先日の射抜く様な眼差しとくだんの爆弾発言が夢の様に思えてしまった。

「…!おーい、なまえー!」
「あ、ルフィ。」

  声がして、やにわに目線を移せば全力で走ってくる麦わら帽子。大きく手を振ってから目一杯息を吸い「なまえー!」と大声で呼ぶのは間違いなくルフィである。通りすがり達が皆いっぺんに振り返えってしまう様に笑ってしまう。全く、ルフィといると笑顔が絶えない。

「いつもありがとうルフィ。」
「おう!」

  唇から覗く歯はルフィを子供らしく見せてなまえは可愛いなぁ、と目尻を緩めてしまう。そうしていれば輝かんばかりの笑顔で片手を出されたのだった。
  手を繋ぐのかな?と思ってなまえはそのまま手を差し出してみれば思った通り手は繋がれて、しかし指が絡み合ってまるで恋人同士のそれと同じになってしまっていた。

「この方がいい、なまえをいっぱい触ってるって感じがするから。フツーに考えたらだろ?」
「さわっ、」

  最近平穏だった所為ですっかり意表を突かれてしまった!どこで覚えたの?!となまえは目を白黒させてしまう、まさか歳下の子どもにこんな事されるなんて言われるなんて。

「そうだね、触れてる面積はこっちの方がおおいもンネ…!」
「んー…?いやそうじゃねぇんだ、そういう意味じゃなくて。…なんて言やぁいいんだ?普通にくっ付くのとは違うんだ、『なまえに触る』ってのは。」
「ええと、デスネ、えー…」

  予想外な返答だ、手を触れるそのものの意味では無くて、ルフィはもっと深い意味を片手に込めていたのだ。名前をまだ付けられないそれに、なまえもまたその感情に瞠目して半歩足を引いてしまいそうな気分になる。

「まあいっかー。なまえに会えたからよ。」

   にひっと笑ったルフィはしっかりと手を絡めてから「なまえはあったかくって、優しくて好きだ。好きだっていっても足りないくらい好きだ、もっといい言葉あればいいのにって悩んでんだ。」と困る事すら喜ぶ様に言い切っていた。
  なまえはそれがまぶしくてしょうがない。ときとき、と心臓が鳴り始めていく。
  どうしよう、ルフィが、かっこよく見えてしまう、と悩んでしまうのだった。その後の買い物でも笑顔にキラキラエフェクトがかかってしまった、どうして私の網膜と心臓に何が起こったの、と悶々と考え込んでしまうなまえであった。
  因みにルフィは今日も戦隊もののお菓子付きフィギュアを買い物カゴに放り込む。


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