突き放してもいつだって
小学生の時から俺は友達とか少なかった。別に一人でいることは苦ではなかったし気にもしてなかった。 それに、俺の隣にはいつもちひろがいたから。
けど俺は野球のこととなると上級生にも物申すタチだから、上級生に嫌われることが多かった。どんなに痛め付けられても野球を止める気なんてなかったし、あんな面白いポジションを誰にも譲りたくなかった。
けどそんな俺といつも一緒にいたちひろは、格好の獲物になった。
ちひろは関係ないだろ、なんて言ったところで何も解決しないのは分かりきってた。 だから俺はいつもちひろといるようにした。 朝登校する時も、昼休みも。 放課後はすぐに帰らせるか俺が練習終わるまで見えるところで待たせて一緒に帰るようにした。
そんな生活を送っている時に、ふと気づいた。 俺はちひろを守るためにとしてきた。 けどちひろにとっては? 本当にこれでいいのか? 俺と関わっていたせいでこんな思いをしてるのに、俺が守る資格なんてあるのか?
俺は、ちひろがいることに甘えてるだけなんじゃないのか?
―2年の3学期 俺はちひろと距離を置くことを決めた。
「…一緒にいんのも3学期で最後だ」
「え?一也…?」
「3年になったら、俺には関わるな。 それから、俺のことは御幸って呼べ、いいな」
「…分かった、ただし条件が一つ」
「条件?」
「極力直接話すのは止める、その代わり、メールしよ」
「…分かった」
散々俺が行動を制限していたにも関わらず、今度は急に関わるななんて言い出してさすがのちひろも怒ると思っていた。
なのに、それでもお前は… 俺の傍に、居ようとすんのか?
…あぁ、ダメだ。 やっぱり俺はちひろから離れられない。
俺の隣はちひろじゃなきゃダメみたいだ。 こんな俺に、愛想も尽かさず笑いかけてくれる。
『わたしはどこにもいかないから、一也くんもどこにもいかないでね…』
あぁ、分かってるよ 俺は何処にも行かない というより何処にも行けない
俺はお前が…好きだから。
いくら俺が突き放しても、いつだってお前は俺の傍にいた。 実際顔を見合わせていなくても、俺の中はちひろでいっぱいだった。
「…御幸、私は何処にも行かないよ。 だから御幸は、自分の思う道を行けばいいからね」
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