お前の隣は | ナノ

心地よさ

「お前、友達いねーくせになんで携帯弄ってんだよ」

「んーそれは秘密」

「んだとこのやろっ!見せやがれ!」

いつものようにちひろからのメールの返信をしていると、倉持が邪魔をしてきた。
携帯を奪い取ろうとする手を避けながらさっとポケットにしまう。
悔しかったらお前もメールする友達作れば?なんて挑発してにんまり笑ってやれば、首を絞めてくる。
そんなやり取りをしながらその場をやり過ごすのはもう定着化しつつある。

「御幸」

「ん…あれ、ちひろ?何しに来たの」

「何って…教科書忘れたから貸してって言ったでしょ?」

あー、そういやそんなメールきてたな。

誰だコイツ俺に紹介しろよと言わんばかりの視線を送ってくる倉持を放置してさっと教科書を渡してやれば「ありがとう」と一言だけ言ってすぐに戻っていった。
去り際に軽く倉持に会釈してたのはなんか気に食わなかったけど、まあ別に焦ることのほどでもない。

「ちょ、おい御幸誰だあの可愛い子!」

「隣のクラスの女子」

「なんであんな親しげなんだよ白状しやがれ!」

せっかく解放されたと思ったらまた首絞められて、どうしたもんかと考えているとチャイムが鳴った。
チッ、と舌打ちをして席に戻る倉持を確認してやれやれと肩を落とす、と同時に俺の携帯が振動した。

"一緒に居た男の子、野球部だよね?
御幸の親友?(笑)
私に紹介してよー"

短文ではあるがちひろからメールがきた。
授業が始まる前にばーか親友ではねーよ、紹介しなくても知ってるだろ?とだけ返信しておく。野球部のことはいつものやり取りで大抵話してるから、名前だけ言えば分かるだろう。

あ、肝心の名前書くの忘れてた、まあいいか。

携帯をしまって始まった授業を受けながら、さっきのことを思い出す。

久しぶりに見た顔。
つい最近切ったらしい短くなった髪。
そして、匂い。

髪型以外は何も変わってなかった。
次ちひろを見る時も、変わってないんだろうな。

学校は同じでもクラスが違うだけでこうも遠くに感じるもんなのか、なんて考えた時期もあったが、最近はたまにあいつを見かけて変わってない姿を見るのも悪くないと思えてきた。

いつ見ても俺の知ってるちひろであることが、自分でもおかしいと思うほど妙に心地よかった。

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