存在感
『だいじょうぶ、みんなが一也くんきらっても、わたしは好きだし、いつだって味方だよ』
『わたしね、野球やってるときの一也くんがいっちばん好き!』
『わたしはどこにもいかないから、一也くんもどこにもいかないでね…』
『ふぇ…遠くにいっちゃう気がして…こわかったよぉ…』
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懐かしい夢を見た。 俺とあいつがいつも一緒に過ごしてた頃の夢だ。
「昔の夢を見るなんて、俺もどうかしてるな」
そういやいつからだっけ、隣にいるのが当たり前じゃなくなったのは。 一也くんって呼ばれなくなったのは。
俺とちひろは幼馴染ってやつで何かと一緒だった。 友達の少ない俺にとっていつも当たり前のように隣にいたちひろの存在は大きかった。
…大きかったはずなんだけどな。
今じゃ直接会話することはほとんどない。 けどその代わりにメールのやり取りは増えた。 毎日のように特に大したことでもないようなことをメールで話してる。 今日の練習がどうだったとか授業がどうだったとか。 くだらない話がほとんどなのに、一々真面目に返事を返してくる。 文面を見ただけであいつの表情とか鮮明に想像出来て、たかがメールのやり取りだってのにそれだけで俺はちひろが隣にいるような感覚になって、満たされてた。
そうだ、ちひろはいつも俺といた。 そして今俺の隣にいなくなっても、いつでも俺の頭の片隅にいる。 どうやらちひろの存在は俺が思っているより俺の中では大きいものらしい。
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