お前の隣は | ナノ

お前の隣は

午後の授業、部活と、俺は真面目に取り組んだ。
そしてようやく部活も終わり。

着替えを済ませてグラウンド近くで待ってくれていたちひろの元へと急ぐ。

久しぶりに見たちひろの顔。
大丈夫、真っ直ぐに見つめられてる。

今は不満だとか不安だとかそんな負の感情はない。
愛しさしか込み上げてこない。

「部活、お疲れ様」

「待ってくれてありがとなちひろ」

「ううん。
それで、話したいことって…?」

その辺に荷物全部置いて、そっとちひろを抱きしめる。
ずっと、こうして触れたかった。
ちひろは嫌がるわけでもなく、抱き付いてくるわけでもなく、じっとしてくれている。

「…ごめんな。
今まで散々振り回して、傷つけて。
俺はお前が傍にいることが当然だって、ずっとそれに甘えてた」

「うん」

「この前の休みの日、お前が倉持と会ってるのを見かけて、俺は動揺した。
そのせいでちひろを避けることになって、悪かった」

「うん。
でもそれは、私も御幸に話してなかったからおあいこ」

話せば話すほど申し訳なさしか込み上げてこなくて、ちひろは全部許してくれて、むしろ俺を気遣ってくれる。
今までの俺はそれに甘えて自惚れてた。

けど、今は違う。

その優しさに感謝して、俺の気持ちを伝えるんだ。

「ちひろ…お前の隣は…」

この俺だ。
…いや、違う。

ちひろの隣に俺がいることは当然のことじゃない。
俺はちひろが好きで、ちひろは俺が好きだから隣にいることができる。

「…御幸?」

急に黙り込んだ俺に首を傾げて見上げてくるちひろ。
それすら愛しくて、この場所を誰にも盗られたくないって強く思った。

「お前の隣は…俺でありたい。
これから先も、ずっと」

抱きしめる腕に力が入る。
これが俺の今の気持ち。
全部伝わったかは分からない。
少しでも伝わってくれればそれでいい。

無言で抱きしめたままでいると、ちひろの腕が俺の背中へと回される。
言葉はなくても、それだけで十分だった。

「…好きだ、ちひろ」

「私も御幸…いや、一也が好きだよ」

しっかり見つめ合って、俺達は唇を重ねる。
今までの悪戯な口付けじゃない。
割れ物を扱うように、出来るだけ丁寧に、これから先ちひろを大事にしていくことを誓うように、口付けた。


お前の隣にいて恥ずかしくないように、俺はこれから変わってくから。
自慢の彼氏だって、ちひろが胸張って言えるようにな。

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