ようやく気づく
4時限目の授業が終わって、昼休み。 俺はすぐさま倉持のところへと向かう。
「倉持」
「…」
「おい待てって」
「っせーな、俺に話しかけんじゃ…っておい、何のつもりだ」
無視されてもかまわず倉持を呼び止める。そして振り返ったと同時に俺は頭を下げた。
「頼む。俺の話を聞いてくれないか」
「…チッ、しゃーねぇな」
さすがに頭を下げられて無下には出来ないらしく、渋々受け入れてくれた。 そのまま椅子に座って、倉持と向き合う。
色々聞きたいことはある。 けど今一番聞くべきことは一つしかない。
「今の俺のどこに問題があるのか、教えてくれ」
「…んなもん自分で気づけよ」
倉持の言葉はもっともな答えで、言い返すことは出来ない。けど自分でも気づけない。 これじゃあいくら頼んでも教えてくれそうにはないな。
「俺は、ちひろが好きだ」
「んなこと知ってる」
「…ちひろのために、俺は変わりたい。いや、変わらなきゃダメなんだ」
「…」
真剣な眼差しで倉持を見る。 顔を合わせようとしない倉持も俺の真剣な言葉が分かったのかちらっとこっちを見た。 そして小さく溜め息を吐いては自分の頭をガシガシと掻いた。
「はあ…そこまで分かってんなら十分だろ。 お前が過去にちひろちゃんにしたこと、その時のちひろちゃんの気持ちと今のちひろちゃんの気持ち、よく考えてみろ」
過去に俺がしたこと… 突き放したことか? なんで倉持がそのこと知ってんだ、なんて考えは今はどうでもいい。
俺が突き放した時のちひろの気持ち…。 多分ちひろは俺と同じで好きだったはず。 それが急に、関わるなって言われたんだよな。
そして今は…本人から聞いたわけでもなく倉持と休みの日に歩いてるのを見ただけで俺はちひろを避けている。
ああ、そうか。 俺はちひろを振り回してばかりだな。 何もかも当然だからって一々言葉にしていない。
俺はちひろを一度傷つけてる。 それなのに、謝りもしなければその分大事にしようともしていなかった。
「…」
「ようやく分かったかよ。 お前が一番すべきことは、ちゃんと気持ちを伝えることだ。 …ちひろちゃんは、ずっとお前のことを待ってる」
「…さんきゅ、倉持」
「けっ、ほんとお前ってめんどくせー奴だわ」
悪態を吐きながらも笑ってる倉持にもう一度礼を言ってから、俺はちひろにメールした。
"部活の後、会いたい お前に話したいことがある"
ちひろ、俺はようやく気づいた。 俺はこれで変われる気がする。 真っ直ぐに、お前を見つめることが出来る。
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