お前の隣は | ナノ

救ってくれるのはいつも

今朝のことがあってから、倉持は俺の元へは来なくなっていた。
その代わりに教室から出ていくようになって、もしかしなくてもちひろのところへ行っているのは分かった。

それが俺を挑発しているようにしか見えなくて、また苛立ちを覚え始める。
けど心の隅では不安に駆られていた。

本当にちひろが倉持の元へ行ってしまったら、俺はどうすればいいんだ。
そんなことを考えてしまう時がある。

メールすらやり取りしなくなったちひろは、今どう思っているんだ。
俺のことを心配しているのか、それともせいせいしているのか。

…分からない。
今の俺はちひろのことが、考えが、分からない。

「ちひろ…」

倉持もちひろもいない教室で、名前を呟く。

今すぐにでも、抱きしめたい。
キスだってしてぇしからかったりもしたい。

…もう一度、あいつの笑顔が見たい。

『お前がこれからもそのままでいるつもりなら、力づくでもちひろちゃんをお前から引き離してやる』

今朝倉持に言われた言葉が、ふと思い出される。
そのままでいるつもりならって、どういう意味だよ。

俺はちひろが好きだ。
それじゃダメだってのかよ。

「…何なんだよ、ちくしょう」

考えれば考えるほど分からなくなっていく負の連鎖。
ちひろ、お前は一体俺にどうしてほしいんだ…?
俺は、どうすればいいってんだよ。


一人で悩んでいると、久しぶりに俺の携帯が振動した。
一体誰から、なんて考える暇もなく画面を見て手が止まる。

「ちひろから…」

最近の俺なら恐れて見ないメール。
けど俺は縋る思いで本文を見た。

"久しぶり、になるね
体調崩してないかな
…あのね、倉持とケンカしたよね?
何のことケンカしたのか分からないけど、仲直りしてほしいな…"

「…はは、俺と倉持のことかよ」

ほんとこいつは…お人好し過ぎんだろ。
こんな状況になっても他人のこと優先かよ。

お前のそういうとこが…
俺にとっても救いになってんだ。

「…敵わねぇな、ほんと」

"心配してくれてありがとな
倉持と話してみるよ"

端的ではあるが、久しぶりに返信して携帯をしまう。

分からないなら、聞けばいいんだよな。
これで俺も何か変われて前に進めるのなら、お前のためになるのなら、俺は倉持にでも頭下げるよ。

俺を救ってくれるのは、いつもお前だ。
ありがとう、ちひろ。

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