お前の隣は | ナノ

少し離れて見る光景

とりあえず名前と幼馴染ってことを説明する。彼女だということは既に倉持によって噂は広まっているだろうから敢えて言わない。

物珍しそうに観察されているちひろはたじたじ。
そんなところも可愛いとか思いつつ面白いから俺は何もしない。
そしたら助けを求めるような視線向けてくるけど、それでも助けずに眺めておく。

「御幸のどこが好きなの?」

「え、ど、どこって…」

「んだよはっきりしねぇな!
全部なら全部って言っちまえ!」

「え、じゃ、じゃあ…全部…」

「ほんとに言っちゃうんだ」

「え、えぇ!?」

「ぷっ、あっはっはっは!」

先輩達に尋問されるがままなちひろを見てたら耐え切れなくなって、とうとう吹き出してしまった。
いやほんとにちひろは俺を笑わせるの得意だな。

でも本人はすげー不服そうな顔して俺を見てるし、さすがに可哀想だからそろそろ助けてやるか。

「すいません、んじゃ俺こいつ送ってくんで」

「おう、また話聞かせろよ」

「え…いや、出来れば遠慮させてください…」

「ヒャハハ!俺が無理矢理にでも連れてってやるよ」

「倉持は私の味方じゃないの?」

「面白そうだから純さん達の味方だ、ヒャハッ」

「…酷い」

ちひろのむすっとした顔を見た倉持は笑いながら雑ではあるが頭を撫でていた。
…なんか兄妹みたいだな。

ほら帰るぞ、と手を差し出してやると皆がいるからか恥ずかしがって周りを気にしつつ遠慮がちに手を乗せてきた。

一々俺のツボにはまるような反応するもんだからこのまま皆の目の前でさっきみたいにキスしてやろうかと考える。けどさすがにそれだとこの後に俺がシメられるからやめておいた。

「…なんで助けてくれなかったの」

無言で歩いたままでいれば呟くようにちひろが口を開いて、拗ねている。
そういう顔が見たかったから、なんて言ったらさすがに怒るだろうかと思いつつ俺の口は勝手に動く。

「困ってるちひろが可愛かったから」

「…何それ」

「あれ、照れてもいいのに」

じとーっとした視線送られて誤魔化すようにとぼけてみせてもそんなのちひろには通用しないわけで、ここは素直に謝っておいた方がいいかもしれない。
悪い悪いと申し訳なさそうな顔をすれば、むくれたまま、でも手はしっかり握ったまま無言で歩き続けた。

いつもすぐ隣にいるのもいいけど、今日みたいに少し離れた場所から眺めるのも、2人きりだと見れない姿もあるしたまには離れるのもいいかもしれないな。
それを言ったらまた拗ねそうだから言わないでおくけど。

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