彼には敵わない
また御幸が活躍するとこ見れるかな、なんて思ってたら試合はすぐに終わった。 あれ、もう終わり?なんて思いつつ御幸の元へと走る。
「御幸!」
「お、早速来たな」
「ちょうど来たときね、御幸が大きな当たり打ってた」
「はっは、そりゃいいタイミング」
「格好よかった、よ」
「まあな。つかお前、ボロボロすぎ」
急にケラケラ笑い出す御幸、何がそんなにおかしいんだろうと自分を見て思い出した。
部活終わってすぐ来たから私の服は汚れてるし汗で引っ付いてるし、しかも髪の毛はぼさぼさ。 恥ずかしくなってかあっと赤くなる。 そんな私を見て御幸は笑っていた。 さっきとは違う、穏やかな笑み。
「ほら、これ使って汗だけでも拭いとけよ」
「わっ、ちょ、ちょっと自分で拭けるよ!」
ぽいっと頭にタオル被せられてそのまま顔を拭かれる。 タオルで視界が見えないまま御幸の手首掴むけど引き剥がすことは出来なくて、面白がる御幸はまたケラケラ笑いながら今度は大雑把に手を動かした。
「ちょっともうやめてってば!」
「あっはっは!いい反応するちひろが悪い。 っと、一旦戻らねぇとやべーかも、終わったらすぐ行くから待っとけよ」
「もう…うん、分かっ…!」
やっと手が止まって解放されると思った矢先、タオルで遮られてた視界は急に御幸の顔になって、タオルで皆からは見えないようにしつつ…キス、された。
「ぷっ、顔真っ赤。 んじゃ待ってろよそのタオル貸しといてやるから」
真っ赤になった私を見て小さく吹き出した御幸は皆のところへと戻っていく。
私は被せられたままのタオルで真っ赤になった顔を隠すようにしてて、そのタオルからは御幸の匂いがして、終始ドキドキしっぱなしだった。
多分、不意打ちのキスもこのタオルを貸してくれたのも全部、御幸の思惑通り。私の顔が真っ赤になるのを、そして御幸の匂いでさらにドキドキするのを全部分かっててしたんだ。
昔から御幸も私も悪戯っぽいところはあったけど、やっぱり彼には敵わないみたいです…。
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